マンション経営コラム|第6回 区分所有マンションに比べ、一棟買いはハイリスク!?
一棟買いと区分所有

マンション経営には、区分所有マンションという形態(ワンルーム)のほか、一棟買いという方法もあります。
いずれも魅力ある投資ですが、一棟買いには区分所有マンションにはないリスクがあることを忘れてはいけません。
ひとつは資金に関するものです。いざ物件丸ごと一棟買いをするとなれば、億単位の資金が必要になります。まず、この資金をいかに用意するか、また、資金の問題はクリアしたとして、その次に資金をいかに回収するかという問題が控えています。
万一、利益を生む前に災害等で建物が崩壊したとしたらどうでしょう。投資は失敗、莫大な負債だけが残るということになりかねません。
そのほか一棟買いをした場合、空室への対処など、区分所有マンションにもある問題がより大きな問題として出てきます。「より大きい」とは、より高いリスクとなって出てくるということです。
空室と資金回収

基本となるのは家賃収入です。計算をわかりやすくするため、50戸の物件を一棟買いした場合を例に、家賃を10万円に設定して家賃収入を見てみましょう。
常に満室とすれば、年間収入は、
50戸×家賃10万円×12カ月=6000万円の年間家賃収入になります。大きな数字です。
しかし、もし10戸空室が出たとすると、
10戸×家賃10万円×12カ月=1200万円。年間1200万円の収入減という結果になります。
一棟買いは大きな利益が期待できる半面、リスクも大きいのです。ちなみに50戸で10戸の空室は、パーセンテージに直せば空室率20%ですが、総務省統計局によれば共同住宅の空き家率は全国平均で約19%となっています。
区分所有マンションのリスクは?
区分所有マンションの場合、都心でも中古物件であれば数百万円台から1000万円台で購入することができます。もちろん、区分所有マンションにも空室が出る可能性はあり、物件を二つ所有しそのうち一室が空室になれば、空室率は50%ということになります。
しかし、立地の良い場所を分散的に選択し2戸3戸と物件を所有すれば、空室リスクをぐっと抑えることができます。一挙に10戸の空室を抱え、月々500万円、年間で1200万円の収入減を抱えることに比べれば、リスクはずっと少ないのです。これが、区分所有マンションと一棟買いの差別点と言えるでしょう。
万が一の支払いも総額が大きければ一時的に支払う金額も数百万単位になることもあります。そして、一等地で区分のマンション経営を行えば、空室の確率そのものがグッと下がりますので、支払いが数百万円に上るほど支出をする必要もありません。
立地の良い場所と言えば、近くに大学のキャンパスがある場所をあげることができますが、そうした場所で一棟買いをして物件を手に入れたのも束の間、キャンパス移転ということになり、大きな痛手を被るというケースもあるのです。
お宝発見?
不動産の世界には、「お宝物件」と呼ばれるものがあります。
好立地に建つ物件が破格の低価格で売り出される、といったことを言います。「好立地」とは主に交通アクセスが良かったり、近所に商店街、繁華街がある物件で、高い入居率を見込めるでしょう。しかし、こうした「お宝物件」を一般の方が所有できることはほとんどないと言えるでしょう。そうした物件を、情報に敏感な不動産業界が放っておくはずがありません。一棟買いのような大規模な場合、なおさらです。
むしろ一般の方が「これこそ、お宝物件」と思う物件は、実は賃貸経営がうまく行かず、建築時に背負った借金が重荷になり、やむなく売りに出したというものや、老朽化が進み稼働率が落ちてしまったものの、解体や建て直しもできず売りに出したという物件も多いのです。もしもこのような物件を一棟買いしようとしていた場合、よく考えなおす必要があるでしょう。
リスクヘッジ(危険回避)の基本
不動産投資におけるリスクヘッジ(危険回避)としてよく言われるのは、「時間」と「場所」をずらすということです。つまり、同じ時期に同じ場所に2戸物件を買うのではなく、買う時期、買う場所をずらすのです。
一棟買いは言い換えれば、同じ時期、同じ場所に数十戸のワンルーム物件を購入するようなものです。もちろん、莫大な資金があり、数棟を所有できるということであれば話は違いますが、それは不動産投資と言うより不動産「経営」と言ったほうが適切です。
たとえば、サラリーマンとして仕事をしながらマンション経営をするというものとは別の話です。もちろん一棟買いでしか得られない大きな利益も期待ことも事実ですが、結論を言うと一般の方にとって、区分所有マンションに比べて一棟買いはリスクが高いと考えざるを得ないのです。
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