収益マンション経営の出口戦略「売却」と「ローン返済」
「売却」「ローン返済」これが不動産の収益モデル

一定の期間内で、収益を最大化させなければならないプロの不動産会社や不動産投資ファンドなどは出口戦略を重要視しています。
家賃収入によるインカムゲインは安定的である一方、膨大な収益を生む種類のものでもありません。通常は、投資額が大きくなるほど家賃収入からの利回りは低くなることが多いです。
万が一、不動産売却時にキャピタルロスが発生すると、それまで地道に貯めてきた収益マンションの家賃収入が大幅に減るか全額飛んで行ってしまうという事態になるでしょう。
しかし一方で、不動産売却の価格は、買主・売主の状況や世の中の情勢などによって大きく変わることがあります。
インカムゲインによる収益を大幅に増やすためには、こういった収益マンションの価格変動の波を見極めてキャピタルゲインを得ることが大切です。
投資のプロではない個人の不動産投資家ができる出口戦略は、大きく分けて「売却」と「ローン返済」の2つの手段があります。
1つ目の「売却」は、キャピタルゲインを獲得するため購入時よりも高い価格で売却すること、ローンの元本を回収することによって手元資金を用意し、また別の物件に投資できる状態にすること、物件を売却することでその物件が持つリスクから逃れること、この3つのポイントを押さえることが重要です。
これら3つのポイントを達成できたときは、出口戦略としての不動産売却に成功したと言えます。
2つ目の「ローン返済」は、売却をしない前提の土地や建物を「仮に売るとしたらいつでも損のない価格で売却することができる」ようになった状態をもって「出口を確保できた」とすることです。
ローンが残った状態で収入が途絶えると借金を抱える不安にさいなまれますが、ローンの残高が物件を売却した場合の価格を下回った状態になることで、その不安はなくなります。
それが、出口を確保できたということであり、「土地値に食い込む」という表現がなされることもあります。
このように、個人投資家は、「売却」「ローン返済」の2つが不動産の収益モデルであることをしっかりと理解しておくことが大切です。
それではこれらの事項について詳しく解説していきましょう。
不動産投資ファンドの戦略を参考にしよう
プロの投資家である不動産会社や不動産投資ファンドなどは、一定の期間内で収益を最大化させることをミッションとしています。そのため、いわゆる出口戦略を大変重要なものと捉えています。
出口戦略とは、一般的には経済政策を行なうときに用いられる言葉です。
景気が後退している時に政府や中央銀行が大幅な財政支出を行ったことに伴う景気刺激策、量的緩和、ゼロ金利といった金融緩和政策に対し、それらを解除しながら経済成長を軌道に乗せ、なおかつその状態を継続させるために実施する経済政策のことを言います。
不動産投資においては、主に「ある物件を、購入価格を上回る金額で売却できる状態にもっていくための戦略」として使われます。
さて、この出口戦略を「収益を最大化させる」というポイントで見ると、家賃収入によるインカムゲインは安定が期待できますが、一方で爆発的に大きな収益を生む種類のものではないと言えます。
通常、投資額が大きくなればなるほど、家賃収入からの利回りの数字は低くなることが多くなるのです。
そのため、個人投資家には家賃収入による利回りは実質年利10%程度が望まれがちですが、プロの不動産会社や不動産投資ファンドなどは実際には5%程度となります。
この年間「5%程度の利回り」という数字は、一般にそれほど大きいとは言えません。
そして、もしも賃料を大幅値上げするような状況になることがあれば別ですが、そういうことがない限り、5年、10年といった長期スパンで見たときに大きな増幅は期待できず一定のレベルで終始すると考えられます。
そんな中、不動産を売却するときにもしもキャピタルロスが起こってしまうとどうでしょう。それまでコツコツ積み重ねてきた決して多いとは言えない家賃収入がぐっと減ってしまう、もしくは全額飛んで行ってしまうという事態になるでしょう。それは誰もが避けたいものでしょう。
しかし一方で、不動産を売却する場合の価格は、それぞれの買主・売主の状況や世の中の情勢などによって大きく変わることがあります。
例えば、アベノミクスの影響が大きかった時期は相場が全体的に値上がりする傾向にありましたし、古い物件でもきれいにリノベーションを施すなどすれば、他の中古物件と比較して売却時の価格が上がるというようなこともあります。
インカムゲインによるわずかな収益を大きく増加させるためには、こういった価格変動の波を見極めるなどして、売却金額と購入金額の差額によるキャピタルゲインを得ることがポイントになってきます。
百戦錬磨のプロの不動産会社や不動産ファンドは、このように収益をいかに大きく伸ばせるかを常に目を光らせて狙っているというわけですが、個人の不動産投資家であっても、こうしたやり方は参考にしても良いかと思います。
個人で可能なマンション経営収益モデル1.売却

では、投資のプロフェッショナルではない、個人の不動産投資家ができる出口戦略にはどのようなものがあるのか、具体的に見ていきましょう。
マンション経営の収益モデルは、大きく分けて「売却」と「ローン返済」の2つがあります。
「売却」は、不動産会社や不動産投資ファンドなどのプロと同様の手段ですが、個人の投資家にとっても最もスタンダードな戦略と言えます。
出口戦略としての収益マンションの売却を行う場合には、3点のポイントを押さえておくことが重要です。
1つ目のポイントは、キャピタルゲインを獲得するため購入時よりも高い価格で売却するということ。
2つ目は、それまで支払い続けてきたローンの元本を回収することによって手元資金を用意し、また別の物件に投資できる状態をつくるということ。
3つ目は、物件を売却することによって、その物件が持つリスクから逃れられるということです。
特にこの3つ目のポイントは、築年数が古い物件などでは注目すべきところです。
老朽化が進行した物件ではリフォーム費用がかさんだり、状況によっては大規模リノベーションや建て替えをせざるをえないことがあったりしますが、こうしたことを行うと投資効率は格段に下がります。
このような事態になる前に物件を誰かに売り渡すことで、そういった問題を抱えずにすむようになるのです。
これら3つのポイントを押さえることができたときは、出口戦略としての不動産売却に成功したと言えます。
反対に、どれか一つあるいは二つを押さえられなかった場合はうまくいかなかった事例となり、同時にそれが次回に向けての改善点ということになるでしょう。
個人で可能なマンション経営収益モデル2.ローン返済
個人によるマンション経営の収益モデル、2つ目はローン返済の活用です。これは売却と違って、プロではない個人ならではの戦略と言えます。
というのも、不動産会社や不動産投資ファンドといったプロの不動産投資家は、最終的には投資物件をすべて売却することがそもそもの前提になっていますが、その点個人の場合は売却せずに保有しておくという選択肢が存在するからです。
実際、ゆくゆくは売りに出すという前提ではなく、半永久的に保存することを目的に物件を保有しているというケースも少なくないでしょう。
例えば、何代にも渡って受け継いできた土地。もし仮に自分がここにアパートを建設して土地ごと売却しようと考えたとしても、ほかの親族がそれを許さないでしょう。
また、自身で購入した土地や建物で、大変立地が良いとかメンテナンスを丁寧にしており良い状態で保存できているといった理由で、子供や孫の代まで継承していきたいということもあります。
このように、何らかの理由で長期的に所有することを前提とした物件については、そもそも「売却」という概念がありません。
では、こういう場合はどのようにして「出口戦略」を行えばよいのでしょうか。こうした物件も、売却以外の方法によって出口を確保できたかどうかを確認する方法があります。
それは、売却をしない前提ではあるものの「仮に売るとしたら、いつでも損のない価格で売却することができる」ようになったかを見ることです。
その状態になった段階で、該当物件の「出口を確保できた」と判断するのです。
例えば、8000万円のローンを組んである土地を購入したとします。万が一何らかの事情で収入が途絶えローン返済が滞るようなことがあれば、8000万円の借金が残ってしまうことになりますので、投資としては失敗ですし家計としても大きな打撃を受けることになります。
しかし、その土地を売却した場合の価格が(実際に売却するかどうかはさておき)4000万円と見込むことができ、なおかつローンの返済を進め元本が4000万円以下になれば、その段階で「仮に売るとしたらいつでも損のない価格で売却することができる」と言えます。 つまり「出口を確保できた」ということです。
このように、ローンの残高が土地の売却価格を下回った状態になることを、投資のプロたちは「土地値に食い込む」をいう表現をします。「この物件は、購入して10年で土地値に食い込むから、そこまで待てば心配いらないはず」という感じの使い方です。
先述の例は土地のみ(建物を含めない)ものでしたが、建物の価値を含めると減価償却の観点も考慮に入れる必要が出てきます。この場合、減価償却を考慮した上でローン残高が土地+建物を売却できる価格を下回った段階で「出口を確保できた」と考えます。
ここまで述べてきたように、個人投資家にとっては「売却」「ローン返済」この2つが不動産の収益モデルであることをしっかりと理解しておくことが大切です。ぜひ参考にしてください。
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