マンション経営コラム|第10回 投資してはいけないダメ物件とは?
マンション経営における「ダメ物件」

マンション経営において、物件選びは成功のカギを握る大変重要なファクターです。
個人投資家が物件を選択するにあたり出口戦略を確立しておくことは大変重要ですが、そうすることで得られるメリットは大きく分けて2つあります。
1つは、資産としての流動性を高くできること、もう1つは資金を効率よく安全に増やしていけることです。そして、これらの出口戦略を立てるメリットを十分に享受するためには、購入してから考えるのではなく入口、つまり購入の時点で適切な判断を行うことが重要です。
そのためには、購入時にダメ物件をつかまされないよう、買うべきではない物件の特徴をしっかり把握しておかなくてはなりません。
ダメ物件の特徴は、地域のキャップレートと比べて表面利回りが低い、立地が田舎やリゾート地である、ローンが利用できないといったものがあります。これらを良く理解して、投資に利用する物件を選択していきましょう。
それでは、詳しく解説していきます。
個人投資家がマンション経営において出口戦略を立てておくべき理由
個人投資家にとって、物件を選択する前に出口戦略を立てておくことは大変重要です。その理由は大きく分けて2つあります。
1つ目は、「資産としての流動性を高めるため」です。大量生産の消費財であれば、ありふれているぶん売却した時の価格がわかりやすい面もあります。
しかし不動産の場合は、基本的にひとつひとつ特性や利点が異なるオンリーワンで、なおかつ高額です。
そのため、いざ売ろうと思った時にいつどれくらいの価格で売れるのかというのがわかりにくく、現金化するのにも時間がかかります。
つまり、不動産の弱点として流動性が低いということが言えるのです。しかし、逆に言うと、出口戦略をしっかり立てておけばこのような弱点を薄める、もしくはなくすことが可能になります。
つまり、出口戦略を周到にしておくことで、思い立ったら短期間で売却でき必要とあればすぐ現金化できるという魅力的な資産になりうるということです。加えて、売った時の価格も下振れしにくくなるという利点もあります。
そして、このような出口戦略を立てることは、単に自分が物件を売るときに有利になるだけではありません。
こうしてしっかり出口戦略が考えられた物件は、自分から買ってくれた人がまたさらに次に誰かに売却することになったときも、同じように出口戦略を立てやすくなるということが言えます。
一度出口戦略が成功した履歴を持つ物件は、「出口戦略が描きやすい物件」として高い評価を得やすくなるのです。
2つ目は、「資金を効率よく安全に増やしやすくするため」です。
1つ目に挙げたように出口戦略を確立しておくことで物件の流動性を高めることができるのであれば、他の種類の投資と比較してのマンション経営の優位性がさらに高まると言えます。
例を挙げましょう。
あなたが何千万もの現金を有しており、それを銀行で定期預金したとします。確かに利子はつきます。しかし、銀行・時期によって多少異なりますが、その金利はわずか0.2~0.3%程度です。
また、株式を購入して配当金や株主優待を受けるという手もありますが、これは常に株価の下落という心配がつきまとうほか、手放す時にその株価を予測することは大変難しく、ハイリターンを期待できる場合もある反面ハイリスクでもあります。
出口戦略をしっかり立てておくことで、不動産をまるで定期預金と同じような感覚で好きな時に換金できる資産として運用できたら、それは投資家にとっては嬉しいメリットとなりますね。
もっとも不動産は売買の際に手数料がかかるため、頻繁に売ったり買ったりは難しいですが、5年以上の保有を想定できるのであれば、手数料や税金のぶん以上の利益を得ることができるでしょう。
このように、出口戦略がしっかりしている不動産へ投資するということは、「定期預金なみの安全性」と「株式投資なみの利回り」の両方を期待できる状況に持って行くことを可能にするのです。
ダメ物件を掴まされないためには「入口」の時点で気を付けることが重要

前項ではマンション経営において出口戦略を確立することのメリットを説明しましたが、そうしたメリットを享受できるか否かについては、「入口」つまり購入時点での判断がカギを握っているケースが少なくないのです。
もっとも、「親族から譲渡を受けた」などですでに物件を保有している場合は、リフォームやリノベーションで価値を上げ「出口」を作ることも可能ですが、購入時点から出口のことをきちんと考えていた場合と比較して、投資効率や投資が成功する確率がどうしても格段に低くなることは避けられません。
つまり、個人投資家にとって物件の購入の際に少しでも出口戦略が成り立ちやすいものを選択することは大変重要だということです。
逆に言うと、出口を作りにくいダメ物件の特徴について、良く知っておく必要があるということです。
結論から述べると、出口戦略を立てづらいダメな物件とは、いざ売ろうと思っても価値がつかずかなり値段を下げるなどしないと売れないものや、売りたくなってもそもそも売れないもののことを言います。これらを見分けるにはダ、メ物件の3つのポイントを知っておく必要があります。
ダメ物件のポイント1~地域のキャップレートと比べて表面利回りが低い
投資用物件の利回りは、物件の状態、立地、買い手の事情などさまざまな条件が絡み合っているため、一概に何%くらいが良いとは言いきれないものがあります。
しかし、物件の建つエリアによって適正とされている基準、つまり地域ごとの相場は存在します。このベンチマークとなる利回りのことを「キャップレート」と言います。
東京の中心部である千代田区や港区のキャップレートは5%程度、地方都市だと10%程度のところが多くなります。
例えば、キャップレート10%の地域で表面利回り8%の物件を購入したとします。そしてその物件を、買った時と同じ表面利回り8%になる1000万円の価格設定で売却したとしたら、それはその土地のキャップレートより低いため、なかなか買い手はつかないでしょう。売却価格を下げ、利回りが10%くらいまで上がれば買い手が現れてくるはずです。
このように、当該地域のキャップレートより利回りが低い物件は、売り手にとって売却損、つまりキャピタルロスが起こる恐れが高くなるという危険があるのです。
そうなると、出口戦略を確立するどころではありません。
せっかくその物件から家賃収入を得られたとしても、そのインカムゲインの備蓄を食ってしまうかもしれないダメ物件としてお荷物になってしまうのです。
ダメ物件のポイント2~立地が田舎である、またはリゾート地である
リゾート地や別荘地、田舎の物件は一見良さそうに思われますが、実は注意が必要です。
例外として、極めて人気の高いリゾート地の物件は高値で取引されることもありますが、それはほんの一部の話。多くの田舎物件はそうはいきません。
需要と供給の関係性で値段が決まるのが、不動産というものです。どんなに立派な建物であっても立地が悪ければ購入しようとは思われませんし、そもそもの売買件数自体が少なすぎて「キャップレートの相場すら決められない」という地域もあるくらいです。そういう状況だと、例え理論上の利回りが高くても買い手はなかなかつきません。
買い手が見つからなければずっと物件を保有し続けるしかありませんが、資産を寝かせておくだけで、入居者もいなければ維持費だけが飛んでいくという状況になります。これでは、出口戦略としては大失敗となってしまいます。
このような事態を避けるためには、やはり各都道府県庁所在地などといった比較的都市部の物件に投資先を絞るのが良いでしょう。
ダメ物件のポイント3~ローンが利用できない
物件にもよりますが、軒並み購入価格が高額になるというのが不動産の特徴。そのため、ローンが利用できないとなると途端に買い手は遠のいていき、いざ売ろうと思っても一向に売れないという状況に陥りやすくなります。
それでも1000万円くらいまでの物件なら、現金で買える人も多いためそこまで支障はありませんが、それ以上の金額で高額になればなるほどローンを使えるかどうかが大きな問題になってきます。
融資がつかないということはそれだけ売りにくくなるということであり、つまりは出口戦略を確立しにくいという結論になるのです。
ローンが組みにくい理由としては、築年数が古すぎる、違法建築物件である、道路付けが悪い、再建築ができない物件である、更地にしにくいなどが挙げられます。木造のテラスハウスや長屋も融資がつきにくいと言われています。
上記のような物件は、有効な出口戦略を立てるのに大きな妨げとなることが考えられるため、入口の時点で可能な限り避けるのが得策です。
出口戦略を確立しやすい物件のデメリットも理解したうえでマンション経営を行おう
ここまで述べてきたように、出口戦略を立てやすい物件にはメリットが多数ありますが、デメリットが全くないわけではありません。
ひとつ挙げるとすれば、「多くの人がほしがる物件であるため、安く購入するのが難しい」ということです。物件を平均的な価格で購入していれば、当然いきなり大儲けできるなどということはありません。
しかし重要なのは、最初から大儲けを狙うのではなくまずは大損を避けること。大きな損失を出すリスクを廃除しながら、少しずつ儲けを出していくようにすれば、前述のデメリットはそれほど感じなくてすむようになるでしょう。
このあたりもしっかり理解して、ダメ物件に注意しながらマンション経営を進めていきたいものです。
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