マンション経営コラム|第24回 マンション経営で抑えておきたい金融機関との付き合い方
金融機関との付き合い方によって、不動産投資の広がり方が変わる

投資とは単純にいえば、不動産をはじめとする何らかの商品を自身が購入して、その価格上昇の期待や運用によって、購入時よりも高い値段でその商品を売ることを指します。商品を購入するということはつまり、その資金を用立てなくてはならないのです。物件探しよりも、どのようにして資金を調達するのかを決めることが優先となるのです。
「手頃な価格のマンション」のような言い方をすることがあります。しかし「手頃な価格」と言いつつも、数百万円から数千万円(中には数億円)単位まで、一般的に考えれば不動産は相当な高額商品です。これを現金一括で購入できる人は、少ないのではないでしょうか。
多くの場合、このように高額な不動産を購入するための資金を調達するということは、融資を受けるということと同義とも考えられるのです。つまりマンション経営は、何らかの金融機関との付き合いからスタートするといっても良いでしょう。
ここでは、そうしたマンション経営に関わる金融機関との上手な付き合い方を紹介していきます。投資をはじめるタイミングでの付き合い方を知っておくことで、将来的なマンション経営の広がりが大きく異なってくる可能性があります。
金融機関は、不確定な要素の多い不動産投資への融資を嫌う
私たちがマンション経営を行う場合、まずは何から手を付けることになるのでしょうか。売却益や家賃による定期収入の効率が高い物件を探すことはもちろんですが、それよりも先に考えなければならない点があります。
非常に高額な商品である不動産への投資を行うには、その資金調達のために融資を受けなければならず、何らかの金融機関との付き合いは欠かせないものであるといえます。
ではまず、金融機関との付き合い方を考えるにあたって、金融機関は不動産投資をどのように捉えているかを知っておきましょう。
あらゆる金融機関においてその利益の柱となるのは、融資によって生じる金利を得ることです。融資を行う側としての金融機関は、確実に金利分を得るための最善策を講じます。このため、金融機関は金利分を受け取れない可能性をはらんだ、いわゆるギャンブル的な要素の強い融資を嫌う傾向にあります。
投資する側(融資を受ける側=オーナー様)の出口戦略によって売却益を狙うというマンション経営のスタイルは、不動産相場や物件自体の価格変動などのリスクを伴うと判断されます。このため、金融機関にとっては不確定要素が多く、ギャンブル性の高いものと見なすこととなります。金融機関にとって不動産投資に対する融資とは売却益を目指すためのものではなく、確実な毎月の家賃収入によって「賃貸を経営する」行為に対して行うものなのです。
このため、融資によって購入した不動産を短期間で売却したり、またそうした行為を繰り返すことを金融機関は避けています。
つまり、短期間の売却益を狙う投資家は金融機関からの融資を受けにくくなるということです。出口戦略を考える投資家においては、少なくともこのような金融機関の性質を理解しておくことが、投資のやりやすさを考慮する上で重要と言えます。
固定金利での借入は、「5年」までにしておくべき

先に、金融機関は短期間での不動産売却を嫌うと述べました。これは、金融機関が設定している金利全体のシステムにも現れています。
例えば、投資目的の不動産購入用の融資(ローン)を10年の設定で受けたとしましょう。この不動産を10年後のローン完済予定よりも早い段階、購入から5年で売却すると仮定します。返済すべきローンが残っている訳ですから、その物件には本来、抵当権が付いています。これを外すためには、残債の一決返済が必要となるのです。一般的には、物件売却によって返済を賄うことになるでしょう。
物件購入に対する融資を10年間の「固定金利」で受けていた場合、上記の残債の一括返済に加えて、本来であれば残りの5年間に支払うはずであった金利分を違約金(ペナルティ)として支払わなければなりません。
金融機関としては、10年間の家賃収入という経営上の利益を見越して金利を設定して、それに伴った融資を行っています。つまり「固定金利」とは、金融機関の定めた期間全体に渡る金利の受け取りを前提とした融資なのです。
また後述しますが、税制上の仕組みから考えても、購入した不動産は少なくとも5年以上は所有することが得策です。不動産購入の段階から出口戦略を考慮し、かつ固定金利による違約金を避けることをあわせて考えるならば、金利の固定期間は5年程度に設定しておいた方が良いでしょう。
そして5年経過後に、物件の売却をする、改めて固定金利で借り直す、「変動金利」による再度のローン返済を設定する、という選択の余地を残しておきましょう。
変動金利であれば、繰上返済による各種手数料の追加負担だけで済み、違約金は発生しません。返済期間内での不動産売却を考えれば、こちらを選択しておく価値があります。
なお、住宅用のローンおいては繰上返済による手数料は発生しないという金融機関が一般的ですが、投資用のローンにおいては発生することが多いと理解しておくべきです。手数料の額は金融機関によって異なりますが、繰上返済額の0.5〜1%程度を見越しておけば良いでしょう。
高い金利での借入も、不動産投資をはじめるにはマイナスにはならない
これから投資をはじめるというタイミングは、いわゆる融資判断における個人属性が低い状態であり、そもそも金融機関からの融資を受けにくい状態にあるといえます。
そこで、やや金利の高い金融機関からの方が融資を受けやすいという傾向があるので、出口戦略を考慮すればそちらを選択する方法も考えられます。極端に高い金利のものは避けた方が賢明ですが、一般的な相場よりも数%程度高い金利であれば、投資を成功に導くことは可能です。
こうした金融機関からの融資の場合、月々の返済が高くなるため、家賃収入による利益確保を優先した場合には決して得策ではありません。しかし、売却益を得るという出口戦略を前提とすれば、売却によって一括返済が可能であるため、必ずしもマイナスに考えることがありません。
また、このような金利の高い金融機関側から見れば、必然的に売却の事例が多くなるため、他の金融機関のような短期売却への拒否反応は少ないともいえます。
これらを利用して投資や売却実績を重ねることによって、次の物件購入おいては、より金利の低い金融機関から融資を受けることが可能になってきます。単体の不動産売買による一時的な利益だけでなく、長期に渡ってマンション経営を行うのであれば、このように金利が高めの金融機関を初めに利用しておくという選択肢もベターな選択といえます。
売却益への税率は、物件の保有期間によって異なるので要注意
短期間での売却を嫌う金融機関との付き合い方だけでなく、5年以内という短期間での不動産売却は、税制上でもリスクを負うことがありますので、ここでしっかりと認識しておきましょう。
所有した不動産を売却すると、売却益に対して税金がかかります。その際、物件を5年超保有していた場合の税率は20%です。対して、5年以内の保有で売却すると税率が39%にまで跳ね上がってしまうのです。
これは、自分が実際に住んでいる(住んでいた)物件を売ることなども含めた「長期保有(=5年超)」と、売却益を狙った不動産投資による一時的な収益を目論んだ「短期保有(=5年以内)」に対する、行政側の扱いの違いによって生じるものです。
加えて、単一の物件の売買ではなく、複数の物件を5年以内の短期間で売却した場合、「不動産売買を生業としている」と判断されることもあります。こうなると、不動産業としての登録を求められてしまい、煩雑な手続きを要することとなります。また、本業を持つ人にとっては、(就業規定などによって禁止されている場合など)副業として扱われ不利益を被ることもあります。
このように金融機関との付き合い方だけでなく、税制などのさまざまな点を考慮し、投資用の不動産は少なくとも5年超所有することを前提とし、マンション経営の出口戦略を考えていきましょう。
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