投資リスクの5要素とリスク低減のコツ
借金をしての投資において最も重要なポイントはリスク対策
以前、「借金で資産を増やすレバレッジ効果とは」のコラムの中で、借金を使った投資では、ローリスク・ミドルリターンの投資を見つけることが成功の秘訣であるとお話ししました。
そしてその上で、借金をしてマンション経営をするための指標として、投資利回りと長期金利の差を示すイールドギャップ。そして自己資金を基準とし、年間でどの程度、回収できるのかを示すROIをご紹介しました。これら2つの指標を参考に高い数値が期待できる投資をすれば、借金をしても投資をする価値があるということです。
しかし、常にローリスク・ミドルリターンの投資先が見つかるとは限りません。また仮に見つかったとしてもローリスクとはリスクが比較的低いということであり、当然ながらゼロリスクというわけではありません。リスクは必ず発生します。
これを読んでいる皆さまの中にも、借金をして投資をした結果、失敗してしまい「大損をした」という話を、聞いたこともあるでしょう。そういった話を一つでも聞いてしまうと、自分も借金をして投資をしようという気も起きにくくなります。
自己資金のみでマンション経営をする場合、仮に失敗しても自己資金分を上回らない限りは資産が減るだけで、借金を抱える心配はありません。しかし借金でマンション経営をして失敗してしまったら、さらに大きな借金を抱えてしまうことになります。
そこで重要になってくるのがリスク対策です。今回はローリスク・ミドルリターンの投資を見つけたという前提で、発生が予測されるリスクを回避するための5つの要素と、低減のコツをご説明します。
リスク対策の第一歩はどんなリスクがあるのかを知ること
朝起きて、仕事や遊びに出掛ける際に、テレビやスマホなどで天気予報を確認される方は多いと思います。これも一つのリスク対策です。朝は快晴で雲ひとつない天気であっても、お昼過ぎから急に崩れる日もあれば、最近ではゲリラ豪雨の危険もあります。
天気予報をちゃんとチェックすることで、傘が必要なのかどうかがわかります。また特に女性の方であれば、晴れの日か雨かで服装や靴を変えることもあるでしょう。
多分、大丈夫であろうと傘を持たずに外出して雨に降られてしまう。また、今にも降りだしそうだなと傘を持って出かけたが、雨は降らず外出先に傘を置いてきてしまう。勘だけに頼って判断していると、こういった失敗をする可能性が非常に高くなります。
私たちは外出する際に「雨が降る」ことがリスクの一つであることを知っています。その対策として天気予報をチェックするのです。これによって100%ではないものの、かなり高い確率で「雨」というリスクを回避することが可能になります。
投資も同じで、まずその投資を行う上で何がリスクになるのかを知ることはとても大切です。それさえわかれば、天気予報と同じで100%ではなくとも、ある程度のリスクは回避できます。
つまりリスク対策をしっかり行い、リスクコントロールすることで、ハイリスクな投資であってもミドルリスクやローリスクな投資に変化する場合もあります。 ハイリスク・ハイリターンの投資をミドル(ロー)リスク・ハイリターンにすることも、決して夢ではないのです。
投資をする上でリスクを検討する際の最重要ポイントは「時間」
投資を行う上で最大のリスクは、投資当初に予測した収益を生まないことです。これは金利の上昇や景気の悪化などの外的要因、予測の甘さや判断ミスといった内的要因の複数が絡み合って起こります。
予測通りの収益を生む投資を行うためには、投資を行う以前にその投資に対するリスクをしっかりと検討する必要があります。ポイントは3つの「時間」です。ここではマンション経営を例にご説明します。
1つ目の時間は「現在の家賃収入を維持できる期間」です。物件周辺地域の家賃相場下落や空き室になってしまう確率などを鑑みて、現在の家賃収入が維持できるであろう期間を検討します。
例えば大学生向けの物件を取り扱っている場合であれば、基本的には入居した方が卒業するまで空き室になる可能性はさほど高くありません。さらに卒業して空き室になった場合でも、すぐにまた新入生が入ってきますので、ある程度、長期に渡って安定した家賃収入が期待できます。
しかし少子高齢化が進む日本において、最近では生徒数の減少が懸念され、通学の便利な都心に移転する大学も増えています。物件を購入した場所が都心やその周辺でない場合は、そういったリスクを検討する必要があります。
もちろん、何年も先のことまではわかりませんが、数年先ぐらいまでであれば、物件がある地域の人口増減や大学の生徒数の増減などによってある程度の予測は立ちます。また新聞や雑誌などから、大学移転に関する情報などもこまめに入手し、予測の確度を高めていきます。
2つ目の時間は「投資資金の回収にかかる時間」です。1つ目の「現在の家賃収入を維持できる期間」の予測が立てば、それを基に投資した資金が、どの程度の期間で回収できるのかがわかります。
マンション経営となると2,000万円といった額になる場合もあるため、なかなか短期での予測は難しくなります。また転売を繰り返して収益を得ていくのでない限り、マンション経営は家賃によって長期の収入を得ていく投資ですから、短期での予測をする必要はないという考え方もあるでしょう。
しかし、私が「長期ではなく数年先までの短期での予測を立てることが重要だ」と申しているのは、長期になってしまうと予測の確度が低くなってしまいリスク検討にならないからです。また借金をしての投資のため、まずは数年先までの確度の高い予測を立てることで、大きな損失を生むリスクをできるかぎり軽減するといった理由もあります。
最後、3つ目ですが、これは2つ目で予測を立てた「投資資金の回収にかかる時間」をいかに短縮できるかです。投資資金の回収は早くなれば、それだけ予測不能なリスクを負う確率が減ります。また当初の予定よりも早く投資資金を回収し、次の投資を行い複数の物件を所有すれば、リスク分散となり、全体としてリスクの軽減につながります。
回収のスピードを上げることによるリスクもあるため、必ずしも早ければよいというわけではありません。だからこそ、マンション経営を行う前に予めできる限りのリスクを検討、分析することが重要なのです。安定して家賃収入を得られる期間、それによって投資資金を回収できる時期を予測することで、その物件のリスクを図り、実際にはそれほどのリスクではないと判断した時点で初めて投資を行います。
もちろん、どんなに綿密にリスク予測を行ったとしても、必ずと言っていいほど予想外の問題は発生します。しかしそれでもリスクの検討、分析を全くしないで投資した場合に比べれば、よほど大きな予想外の問題でない限りは、リスクコントロールが可能になるのです。
投資リスクを評価するための5つの基準
では、上述した投資をする上で検討すべき3つのポイントを元に、投資リスクを評価するための5つの基準をご説明します。この5つの基準でリスクを評価することで、リスクの高い投資とリスクの低い投資を見分けることができます。
結果としてリスクの低い投資を見つけることができるだけではなく、場合によってはリスクが高いと思われている投資も、実はそれほど高くなかったといったことが判明する。もしくはリスクを低減させることが可能になります。
【1】投資金額に対してリスクが発生した時に生じる損失の大きさ
一言にリスクと言っても、どの段階からリスクになるのかどうかは投資額によっても変わります。また個人差もあります。例えば投資金額の10%を損失したといっても、10万円投資した場合の10%と1,000万円投資した場合の10%では、その差は100倍となります。
また同じ投資金額であっても、仮に100万円の損失をした場合、全てが借金になってしまい、新たに投資をするにはまずその借金を返済しなければならない方もいれば、自己資産で改めてすぐに同じ額の投資ができる方もいます。
そのため、投資を行う場合には、リスクが発生した時に生じる損失の大きさがいくらまでであれば大丈夫であるかの許容範囲を、それぞれの自己資金や借金できる額に応じて決めておく必要があります。
投資を行う最大の目的は、自己資産を増やすことです。自己資産を増やすための投資にも関わらず、新たな資産を生まない借金をしなければならないとなっては投資の意味がありません。投資をするとなると、収益の額ばかりを考えがちですが、まずは予測が外れ損失が生じてしまった場合に、その額がどの程度までの大きさになるのか。またそうなった場合に、自分がどこまでその損失を負担できるのかを、しっかりと決めておかなくてはいけません。
基本的に自分が負担できる額が一定であれば、損失額の幅が大きいほど投資できる額は少なくしなければなりません。反対に損失額の幅が小さければ、投資金額はある程度増やすことができます。自分が負担できる額と損失額の幅は常に意識しましょう。特に一棟物件のように高額な物件になればなるほど損失の額も大きくなります。
【2】リスクが発生する確率
リスクが発生した場合の損失額の幅が予測できたら、次に行うことはそのリスクが発生する確率を予測することです。
仮損失額の幅が小さくとも、リスクの発生確率が高ければ、それだけ失敗する確率も高まります。逆に損失額の幅が大きくとも、リスク発生確率が低ければ、成功する確率が高くなります。
もちろん、リスクの発生確率だけで「投資するか、しないか」を判断するわけにはいきませんが、最終的な判断基準になる場合も多く、5つの基準の中でも重要なポイントとなります。
【3】損失額の大きさとリスクが発生する確率の相関関係
リスクが発生する確率がある程度予測できたとしても、その確率だけではどれだけの損失が発生するかまでの予測は不可能です。
当然ながら、リスクの発生確率が同じであっても、投資金額に対して10%のマイナスになるのか、それとも100%のマイナスになるのかでは、その額は大きく変わってきます。もちろんマイナス10%になる確率と、マイナス100%になる確率も違ってくるでしょう。
基本的には、マイナス10%になる確率とマイナス100%になる確率では、マイナス10%になる確率の方が高くなります。ただし投資は数学のように答えが一つしかないわけではありません。
投資の種類によっては、必ずしもマイナス10%になる確率がマイナス100%になる確率の10分の1とは限らないのです。ここを見誤ると、どんなに慎重にリスクの検討を行っても単なる「机上の空論」となってしまいます。
重要なことは、リスクが発生した時、どういった場合であれば損失額が大きくなるのか、もしくは小さくなるのかを知ることです。過去の統計や経験談、専門家による情報などによって、損失額の大きさとリスク発生確率の相関関係がわかれば、投資を行う時の大きなヒントとなります。
【4】投資リスクを低減するために要する時間
投資金額に対して、リスクが発生した時に生じる損失の大きさと、そのリスクの発生する確率を予測します。その上でそれぞれの相関関係を調べることで、その投資に対するおおよそのリスクの実態を把握することができたと思います。
もちろんこれらの予測は、投資をする前段階での社会情勢、景気などを基に行います。そして予測はあくまでも予測ですから、ちょっとした情勢、景気のずれが起きることもあります。また海外で紛争、テロ、金融危機などの事件が起きれば、日本の情勢にも大きく影響することもあります。情報は常に進化し、ほんの数年で全く使い物にならなくなっていることも、少なくはないのです。
不動産投資ローンは、10年、20年の長期で組むため、投資に対するリターンもしくはロスが確定するまでの期間が長くなります。投資を行う段階では、それほどのリスクではないと判断したものが、10年先、20年先では大きなリスクとなっている場合もあります。
このように長期に渡る投資は、短期のものに比べ、予測にブレが出やすくなります。そういった意味で長期に渡る投資は、短期に比べリスクが高くなると考えることができるでしょう。ですから、この投資リスクを低減するために要する時間は、できる限り短縮させることが重要となります。私が長期に渡る投資であっても短期での予測を重視し、可能であれば積極的に繰り上げ返済をすることをおすすめするのは、そういった理由からです。
仮に35年ローンであったとしても、この先数年の社会情勢、景気と自己資金との兼ね合いからどの程度、返済を早く終えられるかを予測します。ローンの返済が終わってしまえば、その投資が損失を生む確率は限りなくゼロに近くなります。
【5】投資に必要となる自己資金の最低限度
どのような投資であっても、その投資を行うのに最低限必要な金額があります。不動産投資にはフルローンといって、全く自己資金を必要としないものもありますが、その場合は何らかの担保が必要なため、やはり自己資金ゼロでの投資は難しいと言えます。
一般的には、個人が持つ資金には限度があります。ですから投資に必要な最低限度が大きい場合は、投資できる頻度が少なくなる、もしくは投資自体を断念せざるを得なくなります。
さらに限られた投資に資金を集中した結果、その投資が失敗に終わってしまった場合、下落のインパクトを直接、被ることになってしまいます。
これらのリスクを回避するためには、自己資金の投資単位はできる限り小さい方が有利であるということになります。しかしここでのポイントは、自己資金の投資単位は小さい方が良いが、それがそのまま「投資総額の大きさと関連するわけではない」と言うことです。
なぜなら自己資金が少なくとも、借金(ローン)を最大限活用することで総額の大きな投資をすることも可能だからです。
リスクコントロールをしっかりと行うという前提がつきますが、逆にいえばそれさえできれば最小の自己資金で投資総額は最大といった投資を行うこともできるのです。
リスク分散がリスク低減につながる理由
ここまでの説明で、投資を行う場合には「これから起こるであろうリスクを数値としてしっかりと予測し、いかに短期間で投資金額を回収できるかが重要である」、そしてそのためには「自己資金を最小にし、借金を上手く活用することがポイントである」といったことを、ご理解いただけたと思います。
その上でさらなるリスク低減のコツとしては、単純に借金を減らすだけではなく、逆に借金を増やすことで投資先を1つから複数にし、リスクを分散するという方法もあります。投資を行う場合、自己資金のみに限定、もしくはできるだけ早く借金を減らすといった方向に限定することが、必ずしもリスクを低減することにはならないのです。
このように投資を行う場合は、それぞれのリスクを分析評価し、総合的に判断することが必要です。そのためには上述したように、その時の社会情勢や景気、リスクの発生可能性、また投資単位と自己資金のバランスを見極めることがポイントとなります。
また予測は投資の前段階のみではなく、変化し続ける社会情勢を勘案し、その都度、投資結果の検証と見直しを行うことも忘れないでください。
リスク低減を可能にする都心の中古築浅ワンルームマンション経営
ここまでの説明で、リスク低減を可能にする条件を示してきましたが、具体的にはどのような物件を購入すればよいのでしょうか?これまでに出た条件を確認してみましょう。
【1】 投資金額に対してリスクが発生した時に生じる損失の大きさ
【2】 リスクが発生する確率
【3】 損失額の大きさとリスクが発生する確率の相関関係
【4】 投資リスクを低減するために要する時間
【5】 投資に必要となる自己資金の最低限度
これらの条件を統合した場合、都心の築浅ワンルームマンションが良いということができます。理由は、
①物件の金額が不動産投資の中では少額のため辞めやすい
②空室率の低さと家賃の下落率の低さ
③都心のため環境によるデフォルトが起きにくい
④頭金10万円から可能
⑤サラリーマンの年収でもローンの完済を行いやすい
といった理由があげられます。
大儲けも一つの選択肢ですが、失敗しないことを最重要に考えることも選択肢です。
まずは、失敗しないことを目指すのが個人的にはお勧めできます。