IR誘致によって動く企業投資
- 2019/10/13
- ニュース

IRの誘致客を見込み、国内企業の動きが活発に
カジノの候補地
カジノを含む統合型リゾート(IR)開業の将来を見込み、国内企業の動きが活発になってきました。表明している中で、主な候補地は北海道(苫小牧が優先候補地、留寿都)、千葉、東京、神奈川(横浜)、愛知(名古屋、常滑)大阪、和歌山、長崎となっています。政府は2020年にも最大で3箇所を選ぶ予定です。
2500億円で開発「苫小牧」
森トラストの会長がオーナーを務める投資会社は約2500億円を投じ、2023年以降に北海道苫小牧市のIR候補地の近隣で大型リゾート施設開業の計画を明らかにしました。森氏が全額出資するMAプラットフォーム(東京・港)が新千歳空港(北海道千歳市)近接地の森林のうち約40ヘクタールを4期に分けて、森氏は「IRを補完するような施設を検討したい。」との事です。第4期工事、2030年ごろをめどに完成予定としています。まず、第1期では23年~24年に約6万6000平方メートルの敷地に、タイにある5つ星高級リゾート「チバソム」を手掛けるジャソム(シンガポール)が運営する高級ホテルやコンドミニアム(キッチンや洗濯機など生活するための設備が備えられた宿泊施設)を誘致する予定です。それ以降スポーツ・レクレーション施設などを建設予定です。北海道のIR候補地の近くに建設し、IRの誘致客の相乗効果を期待しての大型リゾート施設の開業予定となっています。事業費は金融機関からの借り入れで賄うとのことです。海外IR事業者も苫小牧に注目し、ハードロック・ジャパンは、「ハードロック・エクスペリエンス」という構想とともに、ハードロックならではの“音楽をDNAに”、子どもからシニアまで幅広い世代が楽しめるリゾートの開発を行うことを目指しています。北海道は、当初「苫小牧」「釧路」「留寿都村」の3か所がIR候補地として名乗りを上げていました。最終的には道議会により「苫小牧を優先候補地」として、道内のIR誘致を検討中で「2019年内に判断する」方針です。元々人気のリゾート地でもある北海道は、IR誘致に必要不可欠な観光資源や土地を有しており、IRへの理解を深める活動も積極的に行われています。ただし自然豊かな土地であるがゆえに住民の反対意見も大きく、どこまで市民の理解を得られるかがカギになりそうです。
北海道以外の候補地の国内企業の検討
旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)子会社のハウステンボスは、長崎県がIRの誘致に成功した場合、IRの建設地としてテーマパーク「ハウステンボス」(佐世保市)の一部(30万平方メートル)を205億円で売却する方針です。来場者数に頭打ち感が出ているハウステンボスにとっては、来場者が年間100万~200万人増えるのではないかとハウステンボスの沢田秀雄会長は期待しています。長崎は日本の主要な観光客が集まる中国・韓国から3時間以内と非常に近く、カジノが海外からの観光客をメインに集客することを踏まえると、有利に働く立地と言えるでしょう。しかし一方で、アジア地域にはマカオやシンガポール等を中心に大型IRがいくつも存在しており、長崎のIRが成功するかどうかは、ライバルをどう抑え差別化するかといった戦略に懸かっています。
プリンスホテルは大阪府への進出を検討しています。建設エリアなどは今後詰める方針ですが、「訪日客に加え、関連企業の出張需要も見込める」(小山正彦社長)と期待しています。IRの開業によって観光需要が活性化すると分析しているのです。
建設会社・不動産会社も期待するIR誘致
大成建設の村田誉之社長は「IR誘致に伴う建設需要の増加はプラスだ」と話しています。大阪市の人工島「夢洲」へのIR誘致が実現すれば、25年の日本国際博覧会(大阪・関西万博)を含めた建設需要は東京五輪に匹敵する見通し。近畿圏への経済波及効果は年間で7600億円に達するとしています。
不動産大手では東急不動産が「既存事業とのシナジーなどを考えてエリアを総合的に判断する」とし、IR事業への参画を検討中だ。住友不動産は「今後の展開を注視している」としている。
経済効果の期待と今後の課題
IR誘致の最大の目的は外国人観光客を取り込むこと。特にカジノが解禁されることで外国人観光客の増加が期待でき、施設での消費や交通需要の拡大などを促進します。カジノだけで1ヶ所に2,000人のディーラーが必要とされており、IRができることで雇用創出にもなり、日本の経済を回していくこともできるでしょう。また、土地や施設建設等にかかる投資や、建設に必要な資材の生産・運搬など、建設時点でも経済効果が発生するのもポイントとなります。IRの運営を通して巨大な民間投資の実現や、雇用の増加、消費の拡大、さらに財政の改善などの効果が期待されているのです。しかし、課題も多く住民の反対や周辺の混雑・交通状況の悪化の問題があり。また、世界では米国やシンガポールなどがIRで先行し、世界がIRを活用した観光需要の掘り起こしでは一歩先を行っています。日本は日本の良さ地元の豊富な観光資源との相乗効果で客単価を上げていく必要があるのです。経済効果は見込むことが出来るでしょうが、課題点もまた、解決していかなければならないでしょう。