
2017年の東京都内の基準地価(全用途平均・7月1日時点)は、前年比で3.0%上がったと東京都が発表した。
上昇は5年連続で、上昇率は前年より0.5ポイント拡大した。
商業地は4.9%の上昇で、大型再開発があった銀座や八重洲などのエリアでの地価上昇が目立つ。また、訪日外国人でにぎわうエリアも上昇が続いている。
地価上昇率が都内の商業地で最も高かったのは、東京都中央区の銀座6丁目で前年比21.8%の上昇率だった。
銀座6丁目では、2017年4月に大型商業施設「GINZA SIX(ギンザ シックス)」が開業した。
GINZA SIXは、「FENDI(フェンディ)」や「Dior(ディオール)」といった人気ブランドの他にも、
飲食店241店が出店し、そのうち半数以上が旗艦店となっている。
都内商業地の地価上昇率トップ10のうち、銀座は上位3地点を独占し、いずれも20%前後の高い伸びを示した。
専門家は「GINZA SIX(ギンザ シックス)は売り上げも好調で集客力も高い。銀座の人の流れが大きく変わっている」と指摘する。
都心5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)の商業地はいずれも6%超の伸び率だった。
上昇率が高いエリアでは、大型の再開発が進む地点が目立つ。
13.9%上昇した、中央区八重洲2丁目は周辺では、日本土地建物株式会社が開発した複合商業施設「京橋エドグラン」が2016年11月25日に開業。
開業から9ヶ月で来館者は360万人を突破した。
13.5%上昇した港区高輪2丁目は、JR東日本が山手線の品川~田町駅間に新駅を作る予定。
東急不動産系の東急ステイ株式会社がビジネスホテル「東急ステイ高輪」(客室数は約180室を予定)を2018年に開業するなど、
2020年の新駅開業に向けた再開発が進んでいる。
訪日外国人で賑わるエリアの地価も、依然として上昇が続く。
15.3%上昇した新宿区歌舞伎町1丁目周辺では、訪日外国人の宿泊需要を取り込むために、ホテル開発が相次いている。
2015年に新宿コマ劇場跡地で開業した「ホテルグレイスリー新宿」(藤田観光株式会社)に加え、
2017年3月には「アパホテル 東新宿 歌舞伎町東」も開業した。
「浅草寺」「東京スカイツリー」などの観光地が近い、台東区浅草1丁目は12.6%上昇し、周辺では不動産大手によるホテル開発が目立っている。
2018年の秋には、東京建物が建設し藤田観光が運営する「(仮称)ホテルグレイスリー浅草」(約125室)が開業。
三菱地所も西浅草3丁目で約166室のビジネスホテルを開業する。
東京都内における、住宅地の地価は前年比で1.8%上昇した。
今回の調査で特徴的だったのは、都心3区(千代田区・中央区・港区) の住宅地の地価上昇率がトップ10からほぼ外れた点だ。
頭打ちが続き、都市部の地価上昇が鈍化する一方で、交通利便性が高い周辺部の上昇が目立った。
都内住宅地の上昇率トップは、荒川区南千住8丁目の6.3%。
周辺にある南千住駅では「東京メトロ 日比谷線」「JR東日本 常磐線」「首都圏新都市鉄道 つくばエクスプレス」の3路線が通り、
大型ホームセンターが出店するなど周辺の利便性も高まっている。
株式会社東京カンテイの井出上席主任研究員は、
「元々の価格水準が低かったため、都内でも割安感があり、マンション立地として見直された」と分析する。
荒川区全体で見ると、住宅地の上昇率は5.3%と前年より2.1ポイントのアップ。
また、足立区も3.4%と1.8ポイントプラスになるなど、周辺部の地価上昇が目立っている。
一方、都心3区から上昇率トップ10に入ったのは、千代田区三番町など2箇所に留まった。
千代田区の住宅地の上昇率は5%と前年より5ポイント縮小した。中央区や港区も縮小し、都心3区の上昇率は軒並み鈍化した結果となった。
東京カンテイによれば「これまでは中心部が地価を牽引していたが、都心3区の物件価格は頭打ち気味。
今後は周辺部が引っ張る構造になるだろう」とみている。