
上流の越水、下流で堤防崩す
大きな被害をもたらした2019年10月の台風19号による洪水について、土木学会などの調査で詳細なメカニズムが分かってきた、と日本経済新聞2020年1月17日朝刊が伝えています。
堤防を越えて氾濫した水が下流の堤防を崩す「内水決壊」が各地で起きていた。
国土交通省によると、台風19号により堤防が決壊したのは140カ所。その多くが川の水が堤防を乗り越える「越水」などによる氾濫だと土木学会の調査団が12月の報告で指摘しています。
越水とは…川などの水があふれ出ること。堤防がないところでは「溢水」、堤防のあるところでは「越水」を使う(国土交通省中部地方整備局木曽川上流河川事務局ホームページより)
(そのほかの用語はこちらをご覧ください(国土交通省中部地方整備局木曽川上流河川事務局ホームページ))
例えば、阿武隈川の支流では、町を流れる河川に氾濫した痕跡が見られないにもかかわらず決壊していて、同様に阿武隈川の本流や茨城県の久慈川支流でも内水決壊が起きたと土木学会は報告しました。氾濫した水が川へ戻れず、下流に集中して起きた可能性も土木学会は指摘しています。
これは上流で氾濫した水や市街地に降った雨が、下流に集中して河川の水が堤防を乗り越え、堤防を【川】側から崩す現象で、一般的な決壊の街⇒川に水が入る通常とは逆向きの流れです。
越水への一般的な対策は堤防を高くしたり、不連続だった堤防をつないだりすることで、その場での決壊の危険度は下がります。だが一方で、氾濫した水が川に戻りにくくなって下流へ集中してしまい、下流の堤防決壊の危険度を上げることになります。
このリスクの低減策としては、下流の堤防内に樋管(ひかん)と呼ばれるトンネルや水門を設けて、氾濫した水を川に戻せるようにする手法があります。樋管は、全国に約2万カ所設けられています。しかし、川の水位が高いと水を戻すことができず、大規模な豪雨には対応できません。
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越水などの主な対策
- 堤防の上部や斜面をコンクリートで多い、補強する
- 堤防を高くする
- 川底を掘削する
- 豪雨が来る前にダムから放流しておく
⇒ダムの対策についてはこちらもごらんください。(治水対策の一つとしてダムの事前放流をしやすく)
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国土交通省では近年の水害の増加を受け、治水事業を具体的に示す河川整備計画を見直す動きが進んでいます。計画に沿った堤防の整備率を現在の約6割から引き上げたい考えで、20年度予算では、堤防整備や川底の掘削など計画そのものを見直し、強化することを推進するとしました。
ただ、「堤防整備」には長期間かかるため、目標を引き上げても洪水リスクはすぐには下がりません。そこで別の施策として国交省によると、氾濫のリスクが高い地域から低い地域に住宅の移住を促せば、自治体が治水にかけるコストを下げられる可能性がありますが、それには住民の同意も必要なため、難しい問題でもあります。
そもそも、いままでの堤防は、国の基準では、一級水系は100~200年に一度の頻度で起きる豪雨に耐えられるように堤防を整備するように求めています。また、今世紀末には100~200年に一度の頻度で起きる豪雨の降雨量は、20世紀末の1.1倍になると試算しています。100年に一度の頻度とされる豪雨は50年に一度は起こることになり、今までの計画通りでは対応できない豪雨が増えることになってきます。氾濫を前提とした町づくりというのも大きな要素となってくるでしょう。
これまで、町をみる際にこれまでは、地震だけを気にしている方も多かったのではないでしょうか。今回の台風の被害で水害も気にし始めた方も多いのではないでしょうか。災害リスクはこれからは水害も含め、町づくりがどうなっているか、物件選びのときには見ていくことも必要になってくるでしょう。
河川整備計画とは…全国の河川について、国土交通相や都道府県知事などの河川管理者が、20~30年後の河川整備の目標を立て、具体的な治水工事の内容を定めたもの。「戦後最大の洪水」と同規模の豪雨が起きた際に被害を防げるよう決めている例が多い(引用;日本経済新聞)