引っ越し需要がピークの中、各企業とも新型コロナウイルス感染症対策に苦心も
- 2020/4/16
- ニュース
コロナでも「運送止めぬ」
新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、春の引っ越し需要がピークを迎えています。国土交通省はシーズンの分散を呼びかけてきましたが、転勤や進学に伴う移動は今年も3月下旬以降に集中しました。引っ越しや物流の業者は感染防止対策に注意を払いつつ、業務が滞らない態勢作りに腐心しています。一方で、不動産業者が契約条件などをオンラインで説明する取り組みも広がっています。具体的な取り組みとして、不動産取引の「重要事項の説明」をオンラインで行う「IT重説」などがあります。
引っ越し業者の対策は?
「たかくら引越センター」(東京都三鷹市)の高倉弘樹社長は「6人の社員のうち、誰か1人でも感染したら仕事が回らなくなる」と危機を強めます。
例年は、6人ほどのアルバイトに交代で出てもらっていましたが、今年は新型コロナウイルスへの感染リスクを考えて2人に。社員にも3月中旬から不要不急の外出を控えるよう求めています。仕事の性質上、外部との接触を避けるのには限界がありますが、作業中はマスクや軍手を着用し、ドアノブや手すりをむやみに触らないなど「できることは徹底している」(高倉社長)といいます。
国土交通省が引っ越し業の大手6社に調査したところ、2018年度の1ヵ月あたりの引っ越し件数は約17万3千件。3月(28・2万件)と4月(28・8万件)が突出し、3月下旬からの2週間に集中します。今シーズンも3月25日から4月7日ごろまでがピークです。
h3>物流業者ではどうか?
東京都江東区の物流会社、「カトーレック」では春の引っ越しシーズンになると、家電や通販関連の運送が増えます。新型コロナウイルスの感染拡大が重なった今年は、従業員と家族の健康状態を毎日チェックしているといいます。
仮に感染者が出て営業所を閉鎖せざるを得なくなった場合、運送が滞らないように荷物を関連会社や近くの同業者に移す計画です。他の従業員に感染の疑いがなければ、引受先に派遣することも検討しており、担当者は「簡単に運送を止めるわけにはいかない」と気を引き締めています。
対面で接客する不動産業者の場合
対面で接客したり、営業車両で物件を案内したりする不動産業者も、感染対策に注意を払います。
東京都品川区の「三都市アース」は感染が広がり始めた2月初旬に、無料対話アプリのLINE(ライン)やSkype(スカイプ)を用いた仲介サービスを導入しました。事前に転居者に契約書類を郵送し、スマートフォンの画面越しに契約条件や注意事項を説明します。
サービス導入後の利用は約30件で、インドネシアからの通話も可能だったといいます。「交通費を節約でき、長距離移動中の感染リスクも抑えられる」(営業担当者)利点を生かし、今後はパソコンと連動したシステムの導入も予定しています。
不動産取引は従来、消費者保護のため、契約条件や耐震診断など「重要事項の説明(重説)」について、宅地建物取引士の資格を持った者による対面が求められていました。国交省は2017年10月、賃貸物件に限り、対面と同等の配慮を条件にテレビ電話で説明できる「IT重説」を解禁。大手不動産情報サイト5社によると、IT重説用システムの提供数は2018年1月時点の約2400件から、2019年1月には2万5600件に増えたといいます。
不動産取引に詳しい渡辺晋弁護士は、「新型コロナの感染拡大が広がるなかではIT重説も有効な取り組みで、今後活用も進むだろう」と指摘。その上で、対面に比べて説明を聞き流してしまう恐れもあるとして「契約後のトラブルを防ぐためには、借主が手元の書面と説明を照合しながら内容確認するなどの注意が必要だ」と話しています。