
人口、人口増加率ともに全国首位
総務省によると、東京都の総人口数は2019年10月1日時点で1392万人で、昨年から0.71%のプラスとなりました。人口、人口増加率ともに全国首位でした。増加の原因は他道府県や海外との間の人口移動をさす社会増減のプラスが大きいと考えられています。
「職住近接」の傾向
職場と住居が今までよりも近くなれば、通勤によるストレスが軽減できるとともに、家族と過ごす時間が増え余暇が生まれることから、近年職住近接に注目が集まっています。ワークライフバランスが重視される昨今にあって、「毎日30分~1時間も満員電車に揺られて通勤するのはしんどい」という人も増えてきたのではないでしょうか。
この職住近接は国も後押していて、国土交通省は、
職住近接による子育て、家庭の団らんなどの時間的なゆとりや文化、ショッピング等を重視した生活を求める街なか居住へのニーズは強く、(中略)都心地域においては、居住を含む多様な都市機能が高度に複合した魅力ある市街地への更新を図る必要がある
と記しています。
実際に、住宅・不動産ポータルサイト「LIFULL HOME’S」に掲載された都内主要ターミナル駅に通う人を対象に行った「どこの駅から通ってるの?ランキング」によれば、東京、新宿、渋谷、池袋のビッグターミナルから、「意外と近いエリアからのアクセス」が最上位を占めていることが分かります。
東京、新宿、渋谷、池袋の各駅を日々利用する通勤・通学客がどこから来ているのかを調べたところ、東京では清澄白河、森下、神楽坂(牛込神楽坂を含む)、新宿は中野富士見町、新中野、東高円寺、渋谷は三軒茶屋、西太子堂、若林、池袋では中板橋、大山、板橋区役所前となりました。ベスト3はいずれも各ビッグターミナルからわずか数駅、3〜5km圏内の駅ばかりという結果です。
つまり、職場から家まではドアtoドアでも30分以内に住みたいと考える人が増えているのです。それゆえ、他県に比べ大企業が集まる東京には、自然と人が集まってくるというわけです。以前は東京は家賃が高いと郊外に住む人も多かったのですが、最近では職住近接を推奨している企業も多く見受けられ、家賃保証や安く住める社宅など充実した保証を受けられやすくなっています。
「留学生30万人計画」と「東京オリンピック」
意外にも外国人の入国も多く、3万人以上が入国し居住しました。特に外国人居住者は留学生が多く、これには2008年から行われていた「留学生30万人計画」が関係していると思われます。留学生30万人計画は、2008年7月29日に日本政府によって公表された計画で、2020年を目途に30万人の留学生受入れを目指すというものです。
留学生30万人計画が公表されて以降、新たな日本語教育機関が設立され、学生募集で留学生を受け入れる専門学校や大学・大学院などの高等教育機関も増えてきています。コンビニエンスストアやスーパーマーケット、居酒屋、ファーストフード店などで販売スタッフとして働く留学生の姿を見たことがある人も多いのではないでしょうか。
実はこの「30万人」という数字は平成29年末には達成されています。来日した留学生の出身国・地域も、多国籍・多地域になってきています。
さらに日本では、2018年に訪日外国人旅行者数が3,000万人を超え、2019年4月には新たな外国人材の受入れのための在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」が創設されるなど、留学生の他にもさまざまな目的を持った外国人の受入れが促進されています。外国人の受入れが促進される一方で、来日した外国人が日本社会に溶け込めるようさまざまな取り組みも行われています。
例えば、外国人からすれば、災害時の対応や、そもそも災害時に使用される日本語がわからないという問題を解決するため、昨今の日本では、各自治体や団体によって外国人のために“やさしい日本語”を用いた防災マニュアルやガイドブックの作成、防災訓練が行われています。
他にも、配偶者や子供にとっては日本語そのものが問題となっていますが、昨今では配偶者や子供のために、日本語を学べる環境づくりも進められており、今後その動きはさらに加速していくと考えられます。また、宗教や思想も多様化していますが、お祈りのための礼拝室が商業施設や教育機関などのさまざまな場所に設置されるケースが増えてきています。
また、2020年に開催予定だった東京オリンピックに向けても、国は2017年3月、東京オリンピック・パラリンピック開催を踏まえた、新たな「観光立国推進基本計画」を決定していました。
この計画では、国際観光に関わる目標として、訪日外国人旅行者数4000万人、訪日外国人旅行消費額8兆円、訪日外国人リピーター数2400万人などを掲げていました。これらの目標を達成するために、訪日プロモーションの実施、ビザ発給要件の緩和、最先端の技術を活用した出入国審査の実現、通訳ガイドの充実およびランドオペレーター登録制度の導入、Wi-Fi環境の整備の5つの対策をとっており、日本が外国人にとって居心地の良い国になったことで、留学生や旅行で日本を訪れた外国人観光客がそのまま日本に居住するケースも増えたのではないでしょうか。
自然増減はマイナス
日本国内や海外からの転入者は多いのですが、一方で出生率の低い東京は死亡が出生を約1万5千人近く上回り、自然増減はマイナスでした。東京では2012年に自然減に転じて以来、マイナスが続いています。しかし、東京以外でも大都市の大阪圏などでは同じように少子化が危惧されているため、人口増加率の高い都市での自然減はある程度仕方のないことかもしれません。
HPによると東京の年齢3区分別人口は、0~14歳の年少人口が総人口の11.3%、15~64歳の生産年齢人口が総人口の66.0%、65歳以上の老年人口が総人口の10.9%となっています。このことから東京に住む人は、一人暮らしの社会人が多いのではないかと予想できます。ということはやはり、東京に転入する人は職住近接が目的なのです。
これからも需要は上がりそうです
現在、都の総人口は全国の11%にあたります。特に外国人は51万人と全国の21%を占めています。
東京都は1990年代半ばまでは人口増減を繰り返しましたが、それ以降は人口が増加しており、1990年代末以降は約5万人から10万人程度の人口増加が続いて、これからもしばらくは人口が増加し続けるといわれています。特に、単身世代の需要は増え続けるでしょう。オリンピックに向けホテルを増やす計画が行われているので、ホテルに土地が使われてしまい一人暮らし用のマンションの不足が懸念されているほどです。
しかし、東京に人口が集中しているということは、東京以外の都市、特に地方では人口が減り続けているということです。人口の減少が始まると、その地区の医療や社会福祉などにも影響が出てきます。また、人口が減少している地域では、スーパーなどの小売店が少なくなったり、バスなどの公共交通機関の本数が少なくなるなど、生活上の不便が発生することも少なくありません。さらに、当たり前ですが、自宅を購入した場合などは、将来的な不動産の価値が予想よりも下がる可能性があります。物件の購入の際はその地域の将来的な価値、つまりこの先どれくらい人が増えるのか、減るのかということを予想しなければなりません。