事業用資産の所得課税の特例が延長されました~譲渡税の繰り延べ
- 2020/6/26
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特定の事業用資産の買換え等の場合の課税の特例が令和5年3月31日まで延長されることになりました。
譲渡所得とは
一般的に、所有している土地、マンションなどの建物、株式、ゴルフ会員権、貴金属などに資産を売った際に生じる所得のことを「譲渡所得」といいます。(事業用の商品や山林の譲渡は入りません)
譲渡所得は、「売れた価格そのもの」ではありません。マンションなど不動産を売るまでには、まず取得する際には、その不動産自体の物件価格の他、手数料などの費用があり、同様に、売却するときにも費用がかかります。譲渡所得は、それらの価格や費用を、売却価格から差し引いたものになります。
譲渡所得の計算方法
マンションなどの不動産を譲渡した際の譲渡所得の金額は、マンションなどの建物を売った金額から取得費と譲渡費用を引いた金額になります。
【計算式】
課税譲渡所得金額 = 譲渡収入金額※1−(取得費※2 + 譲渡費用※3)-特別控除額
※1:土地や建物を売ったことによって買主から受け取る金銭。、マンションの譲渡代金
※2:取得費 次の①、②の内大きい金額を使います
①土地建物の購入代金と取得に要した費用を合計した金額から、所有期間中の建物の減価償却費を差し引いた金額
②土地や建物の取得費が不明、もしくは取得費が譲渡価額の5%より少ないときは譲渡価額の5%
※3:譲渡費用 土地や建物を売るために直接かかった費用
譲渡にかかる税金とは?
譲渡所得には所得税や住民税がかかるので、これらを「譲渡所得税」と呼ばれています。(※2037年12月までは復興特別所得税も発生します。マンションなどの不動産を売却する時は譲渡所得税を支払う必要がありますが、あくまでも正式な名称「所得税」と「住民税」です。
税金の計算方法
所得税は、原則は給与所得や家賃収入など不動産所得など所得の合計額から税額を計算する「総合課税」が原則です。しかし、マンションなど不動産を売却による”譲渡”で受け取った際に得る所得にかかる税額の計算方法は、給与所得などほかの収入と合計をせず、分離して計算する「分離課税制度」になっています。
そして、マンションなど不動産の所有期間によって長期譲渡所得と短期譲渡所得に区分し、税金の計算も別々に行います。
長期譲渡所得:譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの
短期譲渡所得:譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下
さらに、対象となる物件の不動産の用途により、さらに税率が異なります。
所有期間が5年以下と短いときは高い税率
所有期間が5年以下で売却した際、税率は所得税が30%、住民税が9%になり、高い税金が課せられます。(2037年までは、復興特別所得税として所得税の2.1%が上乗せされます)例えば2020年6月に取得したマンションを2025年8月に売却した場合、実所有期間は5年2か月ですが、税金の計算では、基準が違いますので注意が必要です。短期所有の場合は、自宅のような居住用でもマンション投資など非居住用の売位でも税率は変わりません。
居住用の場合は特別控除の特例がある
自宅など居住用の場合は、短期譲渡所得でも長期譲渡所得でも特例により、譲渡収益から3,000万円を差し引いた金額に対して課税が行われます。つまり、譲渡所得の金額が3000万円以下であれば税金がかかりません。
これ以外にも長期譲渡所得で居住用の場合、特別控除が適用できることもあります。
所有期間が5年を超える際にはさらに軽減
所有期間が5年を超えての譲渡の場合は、税率が、所得税15、住民税5%と5年以下の所有期間と比較するとおよそ半分に軽減されます。(復興特別所得税は別途課税)
居住用の場合、10年以上の場合はさらに軽減されます。
買換えの場合は、譲渡税の「繰り延べ」がある
不動産投資をしている際、今所有しているマンションを売却し、高い価格のマンションに買い換えを検討する方もいるでしょう。
売却した金額を最大限に利用し、持ち出しをしたくない方もいらっしゃるでしょう。しかし譲渡所得は分離課税のため、総所得の損金処理をすることができません。売却で得た利益に対しては必ずその利益に対し譲渡税がかかるとなると、売却代金のすべてを次の買い換え物件の購入に充てることはできなくなります。つまり、新たに取得する物件は、売却金額より低い物件を購入せざるえを得なくなります。
事業用資産の買換え特例を適用するためには、売却する資産と買換える資産が両方とも、事業用に使用される必要があります。(事業用の資産の範囲 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3402.html )
そして、10年超えて所有等の要件を満たした事業用資産(貸家や駐車場などの小規模な業務でも可能)を売却して、一定の事業用資産に買い換えた場合、買い換えた金額の80%を上限として(一部75%・70%)、譲渡益を繰り延べすることもできます。この特例は法人個人とも同様の特例があります。(※特例は令和5年3月31日まで延長)
出典;全国宅地建物取引業協会連合会https://www.zentaku.or.jp/wp-content/uploads/2020/01/2020zeisei_2.pdf
この特例では、例えば収益性の低い地方の駐車場の土地を、都心部のマンションへの買換えることでも適用できます。
ただし、譲渡資産の譲渡益が非課税になるわけではなく、また譲渡資産の譲渡益のうち買換え資産に対応する部分の20~30%に相当する部分については、課税が繰り延べられることはありません。そしてあくまで課税の繰り延べなので、次にその不動産を売却したときに譲渡所得が出たら、前回繰り延べた分の譲渡所得が加算されて税額が計算されます。譲渡税の減免ではなく、繰り延べと呼ばれるのはここにあります。