
いくつかの自治体が職員の副業を肯定的にとらえ、取り組みやすい環境づくりを後押ししている。
奈良県生駒市が今夏から公共性のある団体での副業を支援する内部規定を導入し、神戸市も地域貢献につながる副業を認める仕組みを設けた。人口の減少により人手不足が深刻化するなか、地域活動などの担い手の確保につながる試みとなりそうだ。
国家公務員や地方公務員は営利企業で働いたり、報酬を得る事業などをしたりすることを法律で禁じられている。自治体が独自の規定で副業を推奨するのは、先進的な取り組みと言える。
先述の生駒市は在職3年以上の職員を対象に、「市と利害関係が発生しないこと」などの一定の基準をクリアし、なおかつ公益性が高い地域貢献活動や市の活性化につながる活動を対象に報酬の受け取りを認めた。これまでも地域活動に参加する職員はいたが、すべて無償で行い、有償の場合は報酬を辞退していた。
今回の取り組みを受け、現場では「報酬への抵抗感やトラブル発生時のリスクを心配し、活動への参加自体をためらってしまう」との声があった。このため生駒市は有償ボランティアなどへの積極的な参加を促すために内部規定を整備し、職員3人がサッカーのコーチや子供向け教育の講義をしている。
総務省の就業構造基本調査によると、副業をしている人は2012年時点で234万人となり、特に民間企業で副業を認める動きが目立っている。リクルートキャリアが2017年2月に発表した調査結果によると、回答企業約1150社のうち兼業・副業を推進・容認する割合は23%だった。
自治体でいち早く取り組んだのが神戸市。4月に報酬をともなう地域活動を促す「地域貢献応援制度」を始め、5年以内に副業先との契約・補助に関する業務に就いていないことなどを審査したうえで後押しする。
2015年の国勢調査によると全国の約8割の市町村で5年前と比べて人口が減少しており、祭りや地域行事などの担い手不足は深刻だ。少子高齢化がますます進む地方では、公務員を地域活動の担い手として期待する見方がある。
政府は企業の活性化や働き方改革の観点から副業の普及をめざしており、6月にまとめた経済財政運営の基本方針でもガイドラインを策定する方針を示した。
全国の地方公務員は約274万人で、労働力人口の約4%を占めている。副業を認める自治体はまだ僅かだが、働き手として潜在的なパワーを秘めていると言える。