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今の富裕層は、高級住宅地より都心のマンションを選ぶ?
- 2021/12/6
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突然ですが、下記に続ける街の名前の共通点は何でしょうか?
高輪、田園調布、成城、広尾、久が原、赤坂、南麻布、松濤、神宮前、代々木、深沢、代沢、南青山
なんだか、高級そうな名前が並んでいますよね。
これは、富裕層が集まる都内の高級住宅地を並べたものです。見事に城南、城西エリアが並んでいます。
なぜ、東京の南西エリアが富裕層に好まれ、高級住宅地となったのでしょうか。
今回は、今まで当たり前すぎて気にも留めてこなかった『どうして南西エリアに富裕層が住んでいるのか?』ということについて調べるとともに、今、富裕層が高級住宅街から都心のマンションを選ぶように変化しているということについて解説していきたいと思います。
東京の住宅開発の歴史
東京の住宅開発の歴史は大正時代に遡ります。
日本資本主義の父である渋沢栄一が、東京の過密する住宅問題対策としてイギリスの田園都市構想を参考に緑豊かでのどかな住環境を目指し、住宅開発を主導しました。
そして、田園都市株式会社という会社が作られ、四男である渋沢秀雄が田園調布の開発を行います。この田園都市株式会社が今日の東急電鉄に繋がっています。
その他、小田急電鉄も沿線に宅地開発を行っていました。
この頃、東京の交通は鉄道が中心でしたから、駅徒歩圏の住宅が中心的に売れていく事になります。
東急線にせよ小田急線にせよ、東京から西に延びる電車となります。
この時西側のエリアが住宅地に選ばれた理由は何なのでしょうか。
一つは武蔵野台地側で地盤が強く造成に向いていた事が挙げられると思います。
他の視点として、世界的にも富裕層の集まる高級住宅地は西側であり、東側は低所得者が住む傾向にあるようです。
不思議な共通項だと思い調べてみたところ、面白いことが分かりました。
産業革命によって都市に工場が林立すると、多くの排煙が風下に流れるようになりました。偏西風により西から東へ風が吹いているため、煙は東へ流れます。選択肢があるならば、工場よりも西に住んだ方が澄んだ空気の中に住むことができるのです。そのため、お金のある富裕層からは、工場のある都市部よりも西側が好まれるようになったということだそうです。
そんな理由も手伝うのか、西へ西へと住宅開発は進みました。
そんな矢先、1923年に関東大震災が起こります。
過密した東京の住宅は大きな被害を受けて、郊外の邸宅ニーズが一気に高まり、富裕層もこぞって西側へ転居しました。
明治の大洪水の記憶も新しかったでしょうから、より海抜のある西側が選ばれたのも当然かもしれません。荒川は昭和5年に完成しますので、この頃の東京はまだ水害に脆弱でした。
その後高度経済成長期を迎え、日本もモータリゼーションが起こります。人々は車を所有するようになり、自動車はステータスになっていきます。
この時代になって、庭付き一戸建てが富の象徴となっていきます。
すでに住宅開発されていた東京の南西エリアでは、富裕層の定住により街のブランド化が進んでいきます。
用途地域が住宅に限られている住宅地は戸建て用地として人気を博していきます。
それが、冒頭に挙げた街であり、今日でも高級住宅地として富裕層が住んでいる街なのです。
これら高級住宅地の特徴は、第一種低層住居専用地域であり、建ぺい率50%容積率100%の土地である事が挙げられます。これにより2階建て以上の家屋を建てる事は出来ず、敷地内に庭などの余裕が設けられ隣地と家屋が隣接する事もありません。
武蔵野台地上にあり、水害の被害の心配もなく、風情、趣のある閑静な住宅街。それが城南、城西エリアが高級住宅地たる所以なのです。
それでは、現在はどうでしょうか。
富裕層が選ぶ住宅に変化?
コロナ以降、田園調布を始め、住宅エリアの地価は下落しています。それを尻目に台東区、隅田区の再開発地域の地価は上昇を続けています。
そして、江東区、隅田区、江戸川区ではタワーマンションが建設されています。
かつての一戸建てに車付きと言うステータスは時代遅れとなり、駅至近のタワーマンションが富裕層にも選ばれています。
24時間ごみが捨てられて、近隣に商業施設が揃い、都心へのアクセスも良い。それが、現代の富裕層が選ぶ条件になっています。
時代の変化、人々の多様性、テクノロジーの進化など、不動産市況は様々なものに影響されます。長らく住宅市場の絶対強者だった東京の南西エリアですが、ここにきて分からなくなってきました。
治水工事が進み東京では水害はほとんど起こりません。
荒川の氾濫は完工以来90年間一度もありませんし、建築技術の発達により地盤改良や杭打ち工事も発達しました。埋立地の海抜は今では6メートルもあり、東雲等は避難地域に指定されている程です。
東京の南東側に対する評価は以前とは違うものになっています。これからの富裕層は南西一択ではなくなり、多様化していくものだと思った方が良いかもしれません。
いかがでしたか?
生まれたときから当たり前のように『高級住宅地』であったエリアは、都市計画と共に始まり、関東大震災がそれを決定付けたというのは奇妙な運命だなと思います。
地盤を気にする人が多いのも頷けますね。
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