東京23区、初の転出超過!都心から人が消える?

2022年1月28日に総務省より発表された『住民基本台帳に基づく2021年の人口移動報告』によると、東京23区が転出超過になっているとのこと。

転出超過によって、「ついに都心から人が消えるのか」と衝撃的な見出しを取るニュースもありますが、実際はどうなのでしょうか?

東京23区、初の転出超過

総務省の発表では、東京の転入と転出差が昨年比で激減したとありました。
下図をご覧下さい。

2020年と2021年の各都道府県の転入と転出を棒グラフで示したものです。

全国的には地方都市の転出が多い点については変化はありません。注目したいのは、東京の大幅な転入の減少と周辺都市の転入の増加

このグラフは、都心から近郊へ人が移動していることを示しているようです。

東京23区が転出超過となり、近隣である東京都下、近接3県の神奈川県、埼玉県、千葉県では転入が増加しています。23区では15,000人の転出超過となります。

2019年段階のコロナ以前と比べられる同様のグラフを確認してみましょう。東京では圧倒的な流入超過であり、この年から比べると今の減少幅がいかに大きいかが見てとれます。

いくつかの記事を見てみると、転出増加の要因として言われているのは、『テレワーク導入により都心に住む必要が無くなったことから近隣に移り住む人が増えた』ということ。

少し掘り下げて分析してみましょう。

下図はここ数年の東京圏の転入・転出になりますが、コロナ以前は毎年10万人程度の転入超過があります。

東京の人口は1,400万人、720万世帯住んでいます。23区では500万世帯です。一世帯の平均人数は2を割っていますから、概ね250万世帯の単身世帯があることになります。

10万人というと4%にもなりますから少なくない流入という事になりますね。

今回の記事では15,000人ほど転出超過した23区ですが、1%未満の転出超過なわけです。いろいろな記事を読んでみると、「今後東京の流出が止まらない」だとか、「歴史的な転換期である」などと言われていますね。

コロナの影響はいかに?

2020年、コロナの始まった年ですが、この年の流出の中心は外国人労働者でした。そのため、周辺への転出と言うよりも帰国した人が多かったのではないでしょうか。

それでも2020年は転入超過でした。

これが、2021年に入ると有期雇用者やアルバイトの人の所得減が問題になり、これに伴い実家に帰る人、より安い部屋へ引っ越す人の動きが出始めます。

同時に、転勤や単身赴任の延期などが重なり、流入は減少したまま推移します。

2020年では転出は外国人が中心で退去自体は多くありませんでした。コロナが始まったばかりで、様子見をする人が多く、引っ越し自体の件数が激減していました。その動きが2021年に持ち越され、引っ越しが進んだ印象です。

23区からの流出と言ってもこの中には非正規雇用の転出が過分に含まれると思います。そうなるとメインとなる賃貸物件は安価なアパートが中心と言うことになるでしょう。

テレワークにより周辺に引っ越した事案もあるかと思いますが、数字で見れば主だったものではないと思われます。都心3区での客付けに苦戦があるのは今も変わらないと思いますが、23区では持ち直しているのを実感しています。今を転換期に23区の流出が続くと見るのは早合点ではないかと思います。

コロナの影響で賃貸需要に起こった変化はテレワークだけではありません。都市部の時短営業等を受けて自炊率が高まり、調理施設を備えた部屋のニーズが高まっています。買い物に便利で物価の安い街が選ばれるようになりました。

15㎡の築古の3点ユニットに住むくらいなら、少し離れて20㎡以上のアパートを選ぶといった人が増えているのでしょう。

今後どうなっていくのかという点ですが、コロナの動向にもよりますので簡単に断定できることではありませんが、賃貸物件は経済と離して考えることは出来ません。

会社があり、通勤がある限り賃貸需要は生まれます。

そしてテレワークの移行はメディアに取り上げられるほど完全移行ではないという事が重要です。会議や商談で出社が必要であれば、やはり通勤利便性の高いエリアに住むという構図は変わりません。

そして、長らくその構図の中で商業圏も発展してきました。
突然繁華街が移り変わる事もないでしょう。

誰だって馴染みにしているお店や、友人というコミュニティーがあり、それらがインターネットに簡単に置き換わる事もないのです。家族がいれば学区もあり、住み慣れた街を簡単に離れるものでもありません。

アパートの供給過多や築古マンションの需要の伸び悩みは、コロナ以前から起こっていたことです。コロナをきっかけにそれらが表に出たというのが実際のところでしょう。

周辺3県のアパートには十分な空室があり、受け入れられる土壌が整っていました。賃料下落が進んでいた郊外のアパートに丁度、狭小住宅からの需要が合致しているのだと考えられます。

首都圏から人が減っている訳ではないのですから、この動きは限定的であり、23区でも変化が続くのは一部であると思われます。都心3区やその周辺など物価の高いエリアで顕著なだけで23区全域としては混同することではないでしょう。

転出が東京でも起こっているのは事実ですが、記事を読む際には気をつけて情報を精査する必要がありますね。

コラムは読まれなくてはならないので面白くするために誇張する部分がありますが、まるで東京から人が去っていくというのは言い過ぎです。転出者の内訳や転出の目立つ物件を知れば、そこまで騒ぐ段階ではないといえるでしょう。

コロナの収束と共に賃貸市況も賑わいを取り戻すかと思いますが、オミクロン株の今後がどうなるかはまだ分かりません。引き続き、目が離せない状況が続きそうです。

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