
世界的なエネルギー価格の上昇、ウクライナ問題などの影響で、世界中がインフレ傾向にあります。
日本でも連日、「●●が値上がりした」など、価格改定のニュースや記事が散見され、物価の上昇を実感されている方も多いのではないでしょうか?
為替相場では円ドルが125円をつけるなど円安が進み、輸入価格は上がる一方です。
「日本でもついにインフレが起こっている。」
こんな印象を持っている人も多いかと思います。
世間では「大変だ」と騒がれていますが、実際、一体何が大変なのか分からない方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、インフレについてじっくりと考えていきたいと思います。
インフレの定義
そもそも、インフレとは、一体何なのでしょうか?
インフレというのは、物価の上昇が継続することで、貨幣価値に対して物・サービスの価値が相対的に高まり続けること。
よく『インフレ率』という言葉が使われますが、インフレ率の算出の基となるのが『消費者物価指数』です。
消費者物価指数というのは総務省統計局により実施されている家計調査の結果等に基づいて発表されています。つまり、この消費者物価指数が上昇しているとインフレ下にあると考えて良いでしょう。
消費者物価指数では、エネルギーと生鮮食品を除いて考えた数値『コアCPI』の数値をインフレの指標として考えます。
エネルギーと生鮮食品を除く理由は、エネルギー価格と生鮮食品は価格の変動要因が経済状態と貨幣価値に応じて変動するとは限らず、天候や外交関係によっても変動するため、変動要因の傾向を見るのに不適切だからです。そうすると昨今で値上がりしている原油やコモディティー(穀物)は分けて考えると言う事になります。
現在、消費者物価指数は上昇していません。微増、むしろ減少と、物価は上がっていないのです。
日本では原油も穀物も上がっている。しかし、インフレではない。
これが現在の日本の状況ということになりそうです。
しかし、円が安くなっていて輸入品は値上がりし、企業の原材料費も確かに高騰しているのに、何故日本の物価は上がっていないのでしょうか?
日本の現状はデフレに呪われている?
製造コストが上がっているのに販売価格に転嫁できないのは、日本の企業が、「消費者が値上げを受け入れない」と考えているからでしょう。
日本では値段を高くすると売れない。
売れないから高く出来ない。
でもあらゆるコストは上がっている。
……日本の企業は今こういう状態に立たされているのです。
ただ、日本でも値上げに踏み切った企業はあります。4月から値上げのニュースは電化製品や、物流も含み複数の企業で見られています。それでも、日本全体で見ればごく一部であり、消費者物価指数が伸びていくのはまだまだ先のこととなりそうです。
では、値上げをできない企業では何が起こっているのでしょうか?
値上げが出来ないのであれば販売量を増やすか、コストを下げるかという事になります。設備投資など無論、人件費をはじめとする販管費を抑える事で対応するしかありません。そうなると、給料は上がらない、ボーナスは出ない……と所得の冷え込みが起こり、「じゃあ消費も控えよう」と悪循環に繋がります。その連鎖を断ち切って値上げを敢行し、利益を分配して経済を刺激しないと好況には転じないという状態です。
インフレが非常に騒がれているのは事実です。しかし、現状、日本は未だインフレ下にあるとは呼べない状態です。
もちろん、今後の物価次第で日本もインフレが起こる可能性はありますが、「原油も穀物も高い。だから日本はインフレだ!」と考えてしまうのは早計と言えそうです。