民泊・解禁前夜、人気観光地も低調

5月21日の日経新聞に民泊の届け出に関する近況の記事が掲載されていたので、ご紹介したい。
6月15日から本格解禁となる民泊の届け出が低調だ。京都市や仙台市などの人気観光地でも民泊物件の届け出が伸び悩んでいる。
民泊文化の成熟による訪日観光客の増加などビジネス面での期待は高まるが、現段階で受け皿となる物件がどこまで広がるかは不透明だ。
6月15日に施行される民泊法では、自治体への届け出を条件に、年180日までの制限以内で一般の住宅に旅行者を泊めることが認められる。旅館業法に基づかない「ヤミ民泊」で騒音などのトラブルが頻発したため、国が規則を設けた。
観光地として人気が高い京都市は、5月17日時点で民泊物件の届け出は2件にとどまっている。京都市は、市内だけで4千件近い「民泊」施設があると推定するが「最終的な届け出数は1桁台か、少し上回る程度では」とみている。
仙台市、青森市、秋田市でも7日時点の届け出はゼロ、訪日客が増えている金沢市も11日時点で届け出は0件となっている。
北海道では道と札幌市を合わせた問い合わせ件数が1千件を超えたが、届け出は9日時点で96件にとどまっている。東京都・港区は六本木をはじめ訪日客に人気の観光地を抱えるが、11日時点で9件だ。
伸び悩みの背景には、民泊を営む個人や法人が自治体独自の「上乗せ規制」が一つ大きな要因となっている。地域住民の不安や心配に配慮し、安心・安全な住環境の確保のため、条例で制限を追加している自治体が多い。京都市は住宅地での営業日数の上限を年間60日に絞っている。家主不在型の民泊物件には、緊急時に10分程度で駆け付けられる場所に管理人を置くことを求めている。
自治体の上乗せ条例は「事実上の排除要件だ」(関西の不動産事業者)といった声が漏れる一方、そもそも民泊法が定めた年間180日に限られた営業では「人件費や手数料を賄って利益を出すのは難しい」(不動産コンサルタント)との指摘もある。
【民泊登録の障壁となっているものとは】
まず、届け出には消防関連の文書をはじめ、20種類以上の書類をそろえる必要がある。このような煩雑な手続きは新規参入者にとってハードルが高いことは言うまでもない。四国4県では11日までに20件を超す届け出があったが、いずれも書類不備などで受理されていないという。
観光庁の田村明比古長官は4月の定例会見で、「事実上、民泊をしている事業者が継続するかを考えている。今後は色々と動きが出てくるのでは」と期待をかける。
民泊仲介最大手のエアビーアンドビーには約6万2000件の物件が掲載されているが、施行後は無許可民泊を表示しない方針のため、物件の減少を抑えるために家主に届け出を呼びかけている。
ニッセイ基礎研究所の佐久間誠研究員は「収益面が厳しく、二の足を踏んでいる事業者が多い」とした上で、「東京五輪や各種イベントでホテルや旅館が足りない際、代替施設を提供できる民泊の利点は大きい」と指摘する。
一方で、周辺ビジネスの動きは活発になっており、コンビニ各社は訪日客など民泊を利用する人を店舗に呼び込もうと、相次ぎ関連サービスに乗り出している。
ファミリーマートは14日、民泊仲介の世界最大手、米エアビーアンドビーと業務提携で合意。民泊利用者への鍵の受け渡しなどにファミマの店舗網を活用する。
最大手のセブンイレブン・ジャパンもJTBと連携し、民泊のチェックイン拠点として店舗を活用する。2020年度までに全国主要都市の1000店で展開する。ローソンも保管ボックスを店内に設け、鍵の受け取りや返却をできるようにした。18年度末までに都市部を中心に100店に拡大する。
コンビニ以外にも商機は広がる。楽天LIFULL STAY(東京・千代田)は6月から民泊仲介サイト「バケーションステイ」を開始する。楽天ブランドで内装などを統一する運用代行サービスには数千件の問い合わせがあるという。同社の太田宗克社長は「6月15日は始まりにすぎない。物件の届け出は徐々に増えていく」と中長期の視点で取り組む考えを示している。

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