
日本初の民間分譲マンションとされている「四谷コーポラス」の解体工事が9月末に迫っている。
四谷コーポラスの竣工は1956年。現在の分譲マンションの先駆けとなった建物で、
建物の概要は①鉄筋コンクリート造5階建て②住戸数28戸③延べ床面積2290㎡④敷地面積996.52㎡となっている。
公営の集合住宅が12坪、公団でも13坪が標準だった時代に、23坪・3LDKという大型の間取りや、メゾネットタイプを取り入れ、トイレは洋式、共用階段脇にはダストシュートを完備。管理人がクリーニングの受け渡しや荷物の預かりなどもするなど、日本の集合住宅の明るい未来を象徴するような建物だった。
管理規約の制定や管理会社による管理を実施したり、集合住宅初の割賦販売を実施したりするなど、分譲マンション発展の礎となったと言えるだろう。
当時の分譲価格は通常の居室が156万円、メゾネット型が233万円と高額にもかかわらず、代議士や会社の部長クラス以上の人が主に購入し、販売開始から10日で完売する人気ぶりだったそうだ。
そんな高級分譲マンションも竣工から61年を迎え、排水管などの老朽化が目立つようになっていたが、建て替えが決定的となったのは2011年の東日本大震災後に行われた耐震診断で「問題あり」との診断が下ったことだった。
補強工事は高額な上、その工事をしても十分な耐震性を確保することが難しかったのだ。
管理組合で「再生検討委員会」を立ち上げ、建て替えに向けたヒアリング・協議を進め、「建て替え推進委員会」を発足。
全6社による建て替え案コンペを行い、旭化成不動産レジデンスが選ばれた。
9月末に解体工事に着手し、2018年春に分譲が開始・2019年7月に竣工予定となっているが、現在の区分所有者の約9割が再建後のマンションを再取得することを前提に計画されている。
住民のコミュニティが良好で、住宅に関する意識が高かったからこそ実現した今回の建て替え。管理組合の中からは、新しい入居者を歓迎し、いい関係を築いていきたいという声が出ている。
新生四谷コーポラスの未来も明るそうだ。