3万人を超える会員に被害 自転車操業は8年前から
- 2018/10/8
- 社会/法律

スルガ銀行のトップ辞任にまで発展したシェアハウス、スマートデイズ。6500人以上の被害者を出し、被害総額は2000億円にのぼる、ネットワークビジネスのジャパンライフ。今年に入ってから、大型の倒産を契機に社会問題に発展するケースが後を絶たない。そして9月、また大きな社会問題の呼び水になりそうな大型倒産が発生した。被害者数は3万人、負債総額1000億円超え。今年3つ目となった消費者被害型の大型倒産、ケフィア事業振興会の実態と、今後の行方について取材した。
年商44億円が、わずか5年で1000億円に
ケフィア事業振興会は、主に各種食品などの通信販売を手がけながら、数十社に及ぶ関連会社とともに「ケフィアグループ」を構成していた。ケフィア事業振興会と同時に破産したのは、観光施設を運営する飯田水晶山ランド、太陽光発電事業を行うかぶちゃんメガソーラー、干し芋などの製造を行うかぶちゃん九州。その後、9月14日に関係会社12社(負債合計191億9330万円)が破産し。21日には、さらに1社が破産手続きの開始を受けている。事業範囲が広く、その実態がつかみづらい企業として知られていた。
創業は1992年。ヨーグルトのたね菌販売に始まり、事業を拡大。20年後の2012年7月期の売上高は44億円程度だった。しかしそれから5年で、急成長を遂げた。2017年7月期には単体の売上高が1000億円を超えるまで成長した。
なぜ5年という短期間で、売り上げを25倍に拡大できたのか。しかも、金融機関からの借入金はほとんどない。大半が通販会員である個人の投資家から調達した資金であることも分かっている。
異常な成長速度と不自然な資金調達。一体、この不思議な企業は、どんな「カラクリ」のもとに運営されていたのか。
ポンジ・スキーム
直近の売り上げの大半は、通販による食品などの販売ではなく、独自の「オーナー制度」によるものだったとされている。ダイレクトメールで、ケフィアが仕入れた食品のオーナーを募集。商品により償還の期間は異なるが、年間10%程度の利子を上乗せして買い戻すというもの。
例えば、干し柿などケフィアが扱う商品について、「オーナー制度」などと称して1口5万円程度のオーナー契約を結び、“満期”を迎えるとケフィア側が10%の金利を上乗せ、返還するのだ。
このほか、新規事業立ち上げに伴い借入を募る「事業パートナー契約」などにより、会員から資金を調達していた。
破産前日の9月2日に開催された被害者説明会の席上、「ケフィアグループ被害対策弁護団」で副団長を務める島幸明弁護士はこのように見解を述べた。
「短期間で高利の配当を付けて返すスキームなので、それ自体が利益を生む契約ではありません。高利回りを実現できるだけの実業実態があるのか、弁護団としては甚だ疑問です」
実際ケフィア事業振興会の2017年7月期の決算書を見ると、売上高約1004億200万円に対して、商品在庫が約2400万円、買掛金が約2100億円。とても実業で1000億を稼いでいたとは思えない内容だった。
つまり、会員から集めた資金を別の会員に対する返済や配当に充てる、いわゆる「ポンジ・スキーム」と言われる手口だった可能性が極めて高い。このような「自転車操業」は一体いつから始まったのだろうか。
自転車操業のはじまり
会員に対する支払い遅延の問題が発生したのは少なくともここ1年ほどのこと。
昨年11月ごろから、資金の返済について遅れが確認され始め、その後、複数の支払いの遅れが明らかになり、大きな騒ぎになった。ケフィア事業振興課の破産申立書によると、「本年5月に新システムを急遽導入したものの、処理手続きの遅延や事務手続きのミス等が生じ、パートナー等への支払が遅延」したとしている。
こうした”被害”が広がるなか、今年7月には東京で「被害対策弁護団」が結成された。
「ケフィア側が会員に対して支払い延期を要請する旨の通知を送付した今年2月ごろから相談が出始め、6月以降にはかなりの相談が来ました」と被害対策弁護団事務局長の中森麻由子弁護士は語る。
また、名古屋・三河地区でも「ケフィア事業振興会被害弁護団(東海)が結成されるなど、被害は急速に広がりを見せている。
しかし、帝国データバンクでは、8年ほど前の2010年ごろから、ケフィアグループの資金繰りを注視してきた経緯がある。
きっかけは、2010年5月に提出された有価証券報告書と有価証券届出書で、会員向けの社債発行で資金調達をしていたのが発覚したことだった。その後、その社債の償還期限が迫る中で、今度はグループで「柿の森づくり」と称して資金集めを開始していた。これは投資家に柿の苗木を1本につき10万円で購入させ、そこから収穫された柿をグループ会社が買い取るという仕組み。
このほか、「かぶちゃんフードサービス借入金募集」「かぶちゃんランド借入金募集」など、グループ会社で新規事業を立ち上げては会員から借入金を募ってきた。
当時から、「会員からの資金調達がうまくいかなければ、取り付け騒ぎが起こる可能性がある」との懸念を持つ内部関係者もおり、このころにはすでに自転車操業が始まっていた可能性がある。走り出した自転車が安定して前に進み続けるためには、スピードを上げる必要がある。
2010~2011年当時、利回りは3%程度をうたっていたが、これがいつしかエスカレートしていった。より多くの資金を集めるためか、利回りがどんどん上がっていき、直近で募集したものでは10%程度になっている。