大新宿構想「東西」つなぐ自由通路

西新宿の高層ビル

12月21日の日経新聞より、新宿の再開発についてご紹介したい。

東西が拮抗する「東京」

2000年代初め頃から活発になった東京の都市再生プロジェクト。
その約8割は東京駅など山手線の「東」に集中してきたが、近年、渋谷や新宿など「西」のエリアも反転攻勢に出始めた。
東急グループによる大型再開発で東に挑む渋谷の次点は新宿だ。
新宿駅の東西自由通路が2020年に開通するのに合わせ、都庁があるオフィス街の西新宿と繁華街の歌舞伎町周辺をつなぐ「大新宿構想」が動き出す。

今からおよそ10年前、住友不動産の首脳はこんな構想を打ち出した。「西新宿の高層ビル群をデッキで結べないか」――。
当時、丸の内や六本木の大型再開発が実を結び始める一方で、1960~80年代に開発が進んだ西新宿はにぎわいが薄れつつあった。大きな高層ビル群をつないで街を一体化するデッキ構想は、時を経てかたちを変え、大新宿構想となった。2つの国家戦略特区事業を生んだのである。

  • 大新宿構想の1つは新宿住友ビルで現在進行している巨大なアトリウム(広場)建設だ。超高層ビルを山に見立て、その裾野に大屋根をかぶせるような国内最大規模の全天候型アトリウムが2020年までに完成する。広さ約6700㎡の超巨大アトリウムでは、音楽ライブやパブリックビューイングが開催できるようになる。
  • 大新宿構想の2つ目は新宿駅と新宿中央公園を結ぶ中央通りの活性化だ。
    2017年には特区制度による規制緩和で、作りたてのこだわり弁当などを販売するキッチンカーや酒類を扱う仮設の店舗が歩道にも出店するなどして、にぎわいを生み出そうとしている。

西新宿の開発が始まった1960年代、西新宿のビル群はクルマ社会を中心とした都市計画により整備された。ドラマや映画のロケにも登場する広々とした道路だが、人の回遊性やにぎわいを生む役割は乏しい。
大新宿構想は「ビルとビルの間に人の流れを生み出し、にぎわいを創出すること」。10年前から温めていたデッキ構想と2つの特区事業には、こんな願いが込められているのだ。

大新宿構想は2020年の東西自由通路の開通により、西新宿構想に追い風が吹く

これまで、新宿は歌舞伎町などの繁華街でにぎわう東口とオフィス街の西口に分断されていた。JR東日本が約115億円を投じ、新宿駅の東と西を直接結ぶルートはヒトの流れを変えることになるだろう。
西新宿には歌舞伎町などを訪れる外国人観光客らの受け皿となる潜在力がある。ホテルの客室数でみると、京王プラザホテルやヒルトン東京、ハイアットリージェンシー東京など約6600室と国内でも有数だ。20年には英インターコンチネンタル・ホテルズ・グループが高級ホテル「キンプトン」(162室)も開業する。

マンション開発で大新宿構想に更に追い風、神風となるか?

2017年には国内で最高階となる60階建てのタワーマンション「ザ・パークハウス 西新宿タワー60」が完成。今後数年間、西新宿だけで約6400戸のマンションが開発される見通しだ。大新宿構想では、1万人を超す新たな住民たちがオフィス街ににぎわいをもたらすようになるだろう。
東急グループによる大型再開発が進む渋谷では、代官山や恵比寿、原宿や表参道といった周辺エリアとの回遊性を生み、渋谷の集客力を高めるグレーターシブヤ(大渋谷)構想が動いている。
渋谷と競うように、訪日客が押し寄せる新宿の東口の繁華街と再生をめざす西新宿を一体化する試みは、大新宿構想といえるだろう。
新宿駅の西口では小田急百貨店や小田急ハルクなどを抱える小田急グループが新たな再開発を検討している。
東に最先端を奪われた副都心が、オリンピック後の再生に向けて動き出している。

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