
訪日客3000万人突破 浮き上がる課題とは
2018年12月18日、年間の訪日外国人旅行者数が史上初の3000万人を突破した。
2018年を表す漢字が「災」であったように、日本は台風や地震、豪雨などの自然災害が多発する国だ。訪日客が3000万人を突破したが、外国人旅行客に安全に日本を楽しんでもらい、無事に帰国してもらうための環境整備という課題が浮かび上がっている。
災害時の外国人の混乱を回避せよ
【交通機関の課題】
2018年9月に台風21号が関西国際空港を襲った際、一部が停電となってしまった状況を外国人らに的確に伝えられず、孤立した姿が目立った。今後は台風の接近前、外国語が堪能なスタッフを多く配置するとした。
南海電気鉄道では台風21号の接近時に「計画運休」を実施し、英中韓の3カ国語で発信した。同社担当者は「観光客らの混乱を回避するために、正確な情報を多言語で発信する重要性が増している」と話す。
大阪府などの行政もホームページや電話相談窓口などで災害時の被害や交通機関の運行状況などの情報発信に努めているが、認知度の低さが課題だ。
ツアーではなく個人旅行や民泊利用者が増えており、「行動や宿泊先がバラバラの外国人に的確な情報を届けるのは容易ではない」(大阪観光局担当者)という。
【宿泊施設の課題】
大阪府などは大規模災害時には外国語ボランティアをホテルなどに派遣し、現場に近い避難場所などのきめ細かい情報発信を充実させることを検討している。
9月上旬に起きた北海道地震の際は、多くの訪日客が宿泊先や食べ物を確保できず、避難所の場所も把握できないまま右往左往する事態が生じた。
北海道運輸局は、18年度中に大規模な災害時に交通や避難所の情報を速やかに提供する方法を定めたガイドラインを作成。道内の自治体などによる活用を想定している。システム開発のエコモット株式会社は、位置情報を発信するハンディ位置情報デバイスを開発。非常時には訪日客の位置情報を踏まえたメール配信リストをつくって自治体担当者が被災状況や避難所の開設場所などの情報を配信できる。
【風評被害の払拭】
地震と台風の影響を受け、新千歳空港では2018年9月の乗降客数が前年比で22%減少した。10月時点では同5%減まで回復し、12月以降の冬季観光は旅行代金を政府が割り引く「ふっこう割」を実施している。
日本政策投資銀行の調査によると、外国人旅行者が訪日に当たっての不安材料として「地震が起こるかどうか心配」が37%となり、過去最多となった(18年10月)。外国人の自然災害への不安意識が露呈した今、安全性のアピールに向けた発信力が鍵となる。