
正社員の賃金の増加に勢いがつかない。
厚生労働省が2017年5月9日に発表した3月の毎月勤労統計調査(従業員が5人以上の事業所が対象)によると、1人あたりの名目賃金にあたる「現金給与総額」は27万7,512円と、前年の同じ月と比べて0.4%減少したことが分かった。
内訳をみると、基本給にあたる「所定内給与」は0.1%減り、残業代など「所定外給与」も1.7%減った。また、通勤手当や賞与など「特別に支払われた給与」も3.6%減と落ち込んだ。
正社員を含むフルタイムの基本給が伸び悩んでいる原因について、エコノミストたちは「大企業を中心にベースアップは進んでいるものの、産業界全体でみると賃上げの動きが弱いため」と分析している。
一方で、景気の回復と人手不足に伴い、完全失業率は2017年3月時点で2.8%と、完全雇用に近い状態まで回復した。
また、人手不足の企業がパートタイム労働者の賃上げに動いたため、パートの時間あたり賃金は給与は3月時点で2.1%増え、4ヶ月連続で2%台の伸びとなった。
厚生労働省は3月の賃金水準について、「昨年3月の実績が高かったために、その反動で前年割れになった」としている。しかしながら、政府も「働き方改革会議」で産業界に賃上げを要請しているだけに、賃金の伸び悩みは今後の日本経済においても懸念材料となりえる。
正社員の賃金が伸び悩むなかで、労働収入の他に「副収入」「複利」を求める考え方は更に広がっていくことだろう。将来を見据えた資産形成を考えていかなければならない。