
日本全体でみると人口は減少トレンドにあるが、首都圏、特に東京に限港区ってはそうではない。東京都の2018年の推定人口は1,370万人を超え昭和30年代から増加トレンドだ。(参照:東京都総務局 http://www.toukei.metro.tokyo.jp/jsuikei/2018/js181f0000.pdf )とはいえ、例えば小中学校でも、新規に小学校を開校区もあれば、逆に再編が必要な区など少子化に歯止めがかかっているわけではない。
首都圏の私鉄の乗客数右肩あがり 沿線価値の創造
その中で注目したいニュースがある。日本経済新聞2019年1月12日夕刊によると
首都圏の大手私鉄9社合計の乗客数が2018年度に3年連続で過去最多を更新しそうだ。前年度から2%増え、延べ約80億人に達する見通し。
というのだ。もちろん、東京での再開発事業での伸びもある。東京メトロの場合、日比谷や国会議事堂前など近隣で大型ビルが開業した駅の利用が増えるなど再開発の影響もある、という。さらに、鉄道の業界団体の日本民営鉄道協会(民鉄協)によると、景気回復に伴う雇用情勢の改善や、定年延長などによる高齢者の雇用増加、訪日外国人客(インバウンド)の増加などが押し上げているという。
インバウンドの影響は私鉄にも
訪日外国人客の増加は空港とつながる京成・京急だけではなく、新宿・池袋という繁華街で観光客をよく見かけるようになったように都心方向へも移動する手段として私鉄の利用が増えているのだろう。
私鉄の都心方向の移動によりもう1つ影響しているのが、物販・飲食による副次収入である。わかりやすいところでいうと、新宿で百貨店経営をしている京王・小田急のように自社内で免税店を抱えたことによる売上増からもわかる。
人口減や少子化対策の影響を私鉄各社は「営業サービス」でカバー
私鉄各社は人口減に手をこまねいているわけではない。いま沿線に住んでいる人を減らさないために沿線価値の増大に各社策を講じている。それが各社が導入した通勤時に追加料金を支払うことで席確保を保証する「ライナー、特急」というたぐいの有料サービスも一つだろう。「混雑対策」「客単価アップ」とも言われるこのサービスであるが、沿線価値向上アップのためのビジネスチャンスとするむきもある。
民鉄協などによると、最近は子育ての環境の整備など「暮らしやすさ」の創出を重視したり、ベンチャー企業支援の仕組みを作ったりして、沿線価値向上がキーワードとなっている。「運ぶ・住まわせる」と量を求めた時代から、「快適さ・楽しさ」と沿線価値の向上を追求し始めた現代。平成が終わろうとする中、私鉄の攻め方は変わってきている。
通勤ライナーについては、多摩センター駅からの乗客獲得を巡る私鉄対決、京王VS小田急という構図の中ででてきた策ともいえるが、長期目線でいうと「すっと選ばれる私鉄」として沿線に魅力を感じてもらうために沿線価値を上げる戦略を各社日々練っている。これからも私鉄の戦略は注目とともに、この努力によって沿線価値がアップすることをますます期待したい。
沿線エリアの情報はアンテナを張っておこう
「この街に住みたい」と思われるように私鉄各社が競って沿線価値を上げているということは、そこには必ず住居が必要で、住居も含めた「住みたい街づくり」をしているところがこれから注目すべきエリアかもしれない。