東京の街コラム|第15回 東京の下町エリアが人口増加の中心に
人口増が目立つ東京下町エリア
東京23区は、人口が増え続けていますがエリアによって増え方に差があります。
2010年の東京23区で総人口の増加率が高い区は、1位が中央区、以下10位までは、豊島区、千代田区、港区、江東区、足立区、文京区、墨田区、新宿区、台東区となっています。トップ10までに入った区の多くは、東京23区の東側にあります。
東京東部で人口が増加した背景を、いくつか紹介してみましょう。
中央区はウォーターフロントと称される月島、築地、晴海などに高層マンションが数多く建設され順調に人口が増えています。そして日本橋や銀座では、表通りから少し行けば住宅地があります。何代にもわたってそこに住む人たちがいます。
日本の中心地とも言われる千代田区は、番町地区や麹町地区といった昔から続く高級住宅地に加えて、学生が数多く集まる神田地域があります。電気街の秋葉原には高級賃貸マンションが増えたこともあり、その結果人口が増加しました。
日本で最高レベルのブランド力を持つ港区には、麻布や白金の高級住宅街、汐留や台場のような大規模開発地区に一戸建てやマンションが多く供給されており、安定して人口が増えています。
墨田区は、東京スカイツリーの開業以来、国際観光地として活気が出るなどエリアのブランド化が進みました。それにともない、マンションが多く供給されるようになっています。
東京の下町と山の手の発展の歴史
近年人口増加が著しい東京の東側エリアは、江戸時代より東京の下町として人々が暮らしてきたエリアです。
江戸時代の東京は、身分によって住むところが決められていました。武士などの上流階級およびその下人が多く住んだ場所は東京西部で、京浜東北線や隅田川より東側は町民が住んでいました。 地形的に見ると東京西部は標高が高めで「山の手」と呼ばれ、東部の標高が低めのエリアは「下町」と呼ばれるようになり、現在もそのイメージが受け継がれています。
東京の各区は、明治時代以降江戸が東京となり誕生しましたが、第2次世界大戦終結後までに再編を繰り返しました。
東京23区の始まりは、明治11年に15区が設置されたのがその原形です。当時は、現在の千代田区、中央区、港区、新宿区の一部、文京区、台東区、墨田区の一部、江東区の一部がその対象区域となりました。そして戦後の昭和22年(1947年)、それまでの35区から23区に整理統合され現在に至っています。
「山の手」は、皇居から西の新宿区、文京区、世田谷区、目黒区、杉並区、中野区、練馬区、豊島区で、海や川に近い標高の低い台東区、中央区、江東区、荒川区、墨田区、葛飾区、江戸川区、足立区は「下町」と呼ばれるようになりました。
「住みたい街」と「人口が増えた街」は同じかどうか
「山の手」と「下町」と呼ばれるエリアの範囲や、そのイメージの土台は戦後にできあがったものです。
上流階級がかつて住んだ「山の手」は、現在も「住みたい街」として人気があります。
2015年度のリクルート住まいカンパニー「住みたい行政区市のランキング」によると、東京23区のトップ3は、1位世田谷区、2位港区、3位目黒区となっています。以下9位までは、全て京浜東北線で区切ると西側のエリアとなり、10位にようやく中央区がランクインします。
それでは、住みたいエリアの山の手は実際に人口が増えているのか調べてみましょう。
東京23区で人口の増加が著しい街はどこなのかというと、2005~2010年の人口増加率は数値が高い順に1位中央区、2位豊島区、3位千代田区、以下港区、江東区、足立区、文京区、墨田区、新宿区、台東区と続いています。
住みたい街ランキングで1位の世田谷区は13位、目黒区にいたっては20位です。住みたい街と実際に人口が増えている街は違うことがわかります。
人口の増加率が高い区は、中央区や江東区の湾岸部でその数が大幅に増加しています。ウォーターフロント、湾岸エリアに、それまであった工場や倉庫が再開発され、商業施設や高層マンションが建設され若い世代が多く流入しています。
東京下町エリアの今後の課題
このように他の23区がうらやむほど、ウォーターフロントエリアの人口増加はめまぐるしいものがありますが、このような人の動きは、他の地域からの移動に伴って増加した「社会増」と呼ばれるものであり、現在人口が増えた区では、行政やインフラ整備などの対応の遅れが課題となっています。
江東区では小中学校の新設や増設が間に合わず、結果2003~2007年までの4年間は、「受け入れ困難地区指定制度」という条例で人口の増加を抑制せざるをえない事態となりました。そして追い討ちをかけるように、江東区では65歳以上の高齢者の割合も増加しています。
社会増で増えた人口は、高齢者と子どもの増加という2つの現象を同時に生み出し、小中学校の建設・整備だけでなく、高齢者対象の施設も充実させていく必要が出てきました。
防災やインフラ整備、ひいては2020年度の東京オリンピックメイン会場となる準備への対応、豊洲新市場の整備など、優先度が高い課題をどう対処していくが急務となっています。
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