東京の街レポート|第20回 高齢者就業率に見る街の住み心地

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東京の街コラム|第20回 高齢者就業率に見る街の住み心地

高齢者就業率と「住みよい街」との相関関係とは

高齢者就業率と住みよい街

東京23区は、面積や人口などさまざまな違いがあります。23区全体としては人口が増加していますが、区によっては増加にばらつきがあります。
ここでは各区における高齢者の人数やその割合、就業率などのデータが街の住み心地とどのような関係があるかどうか紹介していきます。

高齢者が働く必要性とその意義とは

まず現在の高齢化に伴う問題点や高齢者の就労に対する意識を紹介します。

少子高齢化が進み、今後若い年代の労働人口が少なくなることから、定年後受け取れるはずの年金が減額される可能性が高まっています。

また高齢者の増加に伴い医療費も増加しています。生産性が向上したとはいえ、少ない労働人口では十分な税収を上げられるかどうかも不透明なため、年金制度や医療保険制度の資金不足を補うことも危ぶまれています。

これらの流れを受けて政府は、年金の切り下げや支給開始年齢引き上げ、および医療保険制度は自己負担割合を増加するなど制度の維持に努めています。
そして、高齢者の定年後の就労も奨励することで、自らの収入を自分で確保してもらうよう働きかけています。

医療技術の進歩により平均寿命が延びた日本社会では、定年を迎えたあとも働く意欲を持つ高齢者の数が増えています。
リサーチ会社の2011年度調査によれば、男性60代で40.0%、70代で13.9%の就労率となっています。
そして「何歳まで働き続けたいか」という質問に対しては、65~69歳が33.5%、70~74歳が22.0%、75~79歳が14.3%、80歳以上が4.4%という結果が出ました。

また働く理由では、1位「現在の生活の維持」(24.7%)、2位「生きがいのため」(18.7%)、3位「体力的にまだ働けるから」(17.6%)、4位「健康維持」(14.3%)、5位「社会参加」(11.5%)となっています。

60歳代で、定年後も働き続ける人が働かない人の数を上回る日が来るのは、そう遠くはなさそうです。

23区内高齢者の人数とその就業状況の背景とは

就業状況の背景

東京23区の高齢者の就労状況をみてみましょう。

23区内で高齢化率トップは北区で24.0%、2位は台東区で23.6%です。この2区で高齢者就業率を比べてみると、順位は大きく変わります。台東区が2位で42.8%、北区は23区最下位の24.0%です。

このデータだけでも、北区は高齢者の数が多いのに働いている人が少ない、台東区は高齢者の人数も区内で多く、かつ働いている人もとても多い(2人に1人近い数字)ということがわかります。
このようにしてみると23区内では、高齢者の人数だけでなく働く高齢者の割合もかなり差があることがわかります。

その背景を考えてみると、台東区は江戸時代から交通の要所であり、現在も幹線道路が多く走っています。昔から商工業の中心地として発展してきた経緯があり、アメ横や仲見世などの東京を代表する商店街が数多くあります。また江戸時代以来の伝統工芸も受け継がれており、職人もたくさんいます。

このような背景から、台東区は定年制度のある会社員より定年制のない自営業者の比率が高く、比率は14.1%、23区のなかでトップです。

東京23区では区によって地域性があり、それが高齢者の人数や就業者数に大きく影響していることがわかります。

23区高齢者就業率ランキング

23区全体での高齢者就業率をみてみましょう。

1位 千代田区(44%)
2位 台東区(42.8%)
3位 文京区(36.7%)
5位 中央区(36.3%)
5位 港区(36.2%)
・・・・
23位 北区(24.0%)

上位にランクインした区は23区中心部が多く、この区では会社の役員や自営業者が多い特徴があります。下位にいけばサラリーマン世帯が多くなります。

1位の千代田区は、23区内で昼間の人口と夜間人口の差が最も大きい区です。つまり住んでいる人はとても少ない区です。住宅地も少なく物価は高いので、住んでいる人は富裕層と言ってもいいでしょう。このエリアに住む人の多くは会社役員が多いと考えられます。

2位の台東区は、商業地として江戸時代以来発展してきた下町の代表区です。商売人が多く集まっており自営業主が多いことが、高い高齢者就業率につながっています。1位と2位を比較してみれば、住んでいる人や高齢者が携わる職種に差があることが予測できます。

このように見れば、高齢者就業率の割合が高くても街の雰囲気が全く同じかと言えばそうではないことがわかります。これは、データだけでは読み取れない23区それぞれが独特の特徴を持っていることを示しています。

区により差がある高齢者の就労率や業種について

千代田区と台東区の高齢者の就業実態からわかるように、区によって働く高齢者が多い、少ない、どんな業種に携わっているかなどは違っています。

高齢者就業率が23位の北区(29.4%)はどうでしょうか。北区では就労者の割合も低く、シルバー人材登録者の率も19位と、高齢者の働く意欲が低下していることがわかります。

北区は明治時代以来、製紙会社の工場を始めとして重化学工業中心に発展を遂げてきました。戦後に大規模な団地が建設され、60年代は「憧れの地」として羨望を集めましたが、工場の区外移転が進んだこと、団地の老朽化、住民の高齢化対策が遅れたことから衰退を余儀なくされています。現在北区の活性化を促す政策がとられており、今後の巻き返しが注目されています。

東京23区では、高齢者の区内全体に占める割合だけでなく、就労率、業種などさまざまな点において違いがありますが、働く高齢者が多い区は、23区の中でも比較的住みやすい環境が整った地域が多い傾向があると言えそうです。

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