東京の街コラム|第21回 年収や職業から見る東京23区
住民の年収でライフスタイルが変わる東京23区
多くの大企業の本社や有名大学、巨大なショッピング街、近代的設備の整ったマンション、交通アクセスの良さなど、あらゆる人々のニーズを満たす都会には、快適な暮らしを求めて多くの人々が移り住んできました。
東京23区は日本で最も人口が集中したエリアとなっています。
たくさんの人々が押し寄せた23区内のライフスタイルはどんなものなのでしょうか。
便利で快適な暮らしなのでしょうか。
それを示すデータの1つに住民一人当たりの平均年収額があります。額が高ければ高いほど、それを活かして衣食住全てにおいて充実した日々をすごしているという考え方です。
23区それぞれに住む住民の平均年収額をみれば、どの区で高額所得者が多いのかがわかります。「お金持ち」が多い場所なら、その人たちをターゲットにした高級レストラン、ブティックも多いでしょうし、生活を楽しむためにフィットネスクラブの設備も充実しているかもしれません。また子育て世代のニーズに応えるべく、子どもの将来を考えた早期教育を提供する塾などもあることでしょう。
反面、平均年収が低い区であれば高価な品物を売る店やサービスは少ないですが、その代わりにスーパーが価格競争をしているかもしれません。年収が低いといっても、そのエリアでは人々のお財布事情にあった環境が整っていることでしょう。
ここでは平均年収や職業からみた23区の特徴や住み心地の違いについて紹介します。
23区の年収の差は
東京23区は、区の中心部では住民よりも働きに来る人の数が何十倍も多い区など、区によって大きな違いがあります。オフィス街が多い区もあれば、ベッドタウン的な区などさまざまです。これらの環境の違いをふまえながら、23区の平均年収のランキングをみてみましょう。
総務省統計局が作成した、納税義務者一人当たりの課税対象所得額を参考に、2012年度の東京23区の所得水準を算出してみました。
上位10位の区は次の通りです。
1位 港区(904万円)
2位 千代田区(763万円)
3位 渋谷区(684万円)
4位 中央区(547万円)
5位 文京区(546万円)
6位 目黒区(527万円)
7位 世田谷区(503万円)
8位 新宿区(475万円)
9位 杉並区(445万円)
10位 品川区(426万円)
23位 足立区(323万円)
23区全体の平均所得水準額は429万円です。この額はもちろん47都道府県で第1位です。全国平均は321万円、最下位の足立区でもその額を上回っています。
都道府県別で第2位の神奈川県でも367万円ということを考えれば、23区のどこに住んでも全国レベルからみれば平均以上の快適な暮らしができると考えてもいいでしょう。
平均所得額が高い区で多い職業
次に平均所得額が高い区では、どんな職種の人が多いかを見てみましょう。
・ 管理的職業に従事する役員
・ 専門技術職の役員
・ 管理的職業につく正社員(例:大企業の部長職)
このような条件にあてはまる職業を具体的に紹介すると、大企業の役員、研究者や技術者、作家、編集者、デザイナー、音楽家、裁判官、弁護士、弁理士、公認会計士、税理士、社労士です(注:医師や大学教授はデータから抽出することが不可能なため含まれていません)。
これらの3条件にあてはまる住民が多い区を調べると次のようになりました。
1位 港区(11.8%)
2位 千代田区(11.7%)
3位 渋谷区(9.4%)
4位 中央区(8.4%)
5位 文京区(7.0%)
6位 目黒区(6.8%)
7位 世田谷区(6.7%)
8位 新宿区(6.4%)
9位 台東区(6.3%)
10位 杉並区(5.4%)
23位 足立区(2.8%)
1位から8位までは、平均所得水準額ランキングと同じ結果となっています。
高額所得者はみなさん同じ地域に住む傾向があるのがわかります。上位にランクインした区は、23区の中でも最も都市化が進んだ東京都の中心部です。こういった人たちが多く住む区は、物価水準も高くなります。
住みやすい街に高額所得者が多くなった理由とは
23区の中でも交通アクセスがよく、生活に便利な中心部に高額所得者が集まったのはなぜでしょうか。
理由の1つに江戸時代に建てられた「大名屋敷」があります。
大名屋敷の多くは、現在の港区、文京区、渋谷区、千代田区などに建てられていました。
その後これらの屋敷は、港区にある迎賓館や六本木ヒルズ、赤坂サカス、有栖川記念公園、渋谷区の明治神宮、文京区の東京大学、千代田区にある有名ホテルなどに建て代わりました。
それぞれの施設が建設されるまでに年月がかかったとはいえ、広範囲にわたって建てられた大名屋敷跡を大規模に再開発することができ、現在の町並みが形成されています。
また渋谷区、目黒区、世田谷区は、大正後期から昭和初期にかけて東京の開発が進んだときに鉄道がこのエリア付近に開通したことから住宅開発が進んだ経緯があります。
大名屋敷跡や未開拓の土地など、広範囲にわたって計画的に開発が進み「住みよい街」づくりをした結果、当初から経済力の豊かな人たちがこれらの地にどんどん移り住むようになりました。
このような経緯が現在も受け継がれたことが、23区内の住民に年収の差が生まれた背景になりました。
23区の差は縮まるか
現在まで続いた23区内の差は、未来においてどのように変わるのでしょうか。お金持ちが少ない区は、これからもそのままなのでしょうか。多い区は、これからも賑わい成功者ばかりが集まるのでしょうか。
これらの疑問点を、アメリカのシリコンバレーの例から考えてみましょう。
この地は、現在はIT産業のメッカとして世界中から注目を集める都市になっています。ここはコンピュータ技術者が会社を創業した場所で、以来、エレクトロニクス関係の技術を持った人たちが次々と集まり現在の町並みを築き上げています。このように新しい産業が産まれれば、その場所はこれまでのイメージを大きく変えるチャンスがあります。
東京の大田区では金属機械部品、葛飾区のおもちゃ作り、北区の印刷、板橋区の精密機械、台東区や墨田区の皮革製品は長い歴史を持つ、区独自の代表的な産業です。
これらの伝統産業が未知の新しい分野を切り拓くことができれば、地域の発展に大きく貢献する可能性があります。
現在の住みよい区、人気がある区だけが住まいさがしの基準になるとは言えません。今後の可能性も見すえて住まい選びをしたいものです。
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