東京の街コラム|第23回 渋谷区は企業依存の末人口は増加傾向
東京西部の代表区「渋谷」の成り立ちとは
テレビで映し出されるスクランブル交差点やハチ公前広場。これらは渋谷区にある渋谷駅前の光景です。
今や東京を代表する区に発展した渋谷区は、この渋谷駅付近に集まる若者達の姿に象徴されています。
渋谷区は東京が西部方面への住宅開発を始めた昭和初期に東横線の渋谷駅が開業し、その後、関東初のターミナルデパートが開業した頃から街の歴史がスタートしました。時を経て1964年の東京オリンピックでは、渋谷区内の国立競技場がメイン会場となり選手村もこの地にありました。この頃から渋谷の開発は、大手私鉄会社2社の競争下で次々と進んでいます。
新駅舎の建築から商業施設のオープンなど、今日に至るまでめまぐるしく渋谷の光景が変わりました。
その中に若者の力も加わり、今ある「渋谷ブランド」が形成されていきました。
このように順調な発展を遂げたかのようにみえる渋谷区でも、人口が減少した時期があります。1990年代末から2000年初め「IT景気」と呼ばれた時期が崩壊した2008~2009年頃、渋谷区の人口は一時的にマイナスとなりました。10年ほど経った2012年以降、渋谷駅前再開発が進み、東口に完成した複合商業施設「渋谷ヒカリエ」が完成し、大勢の人たちが再び渋谷へとやってくるようになりました。
23区の西の代表とも言える渋谷区では、鉄道会社が主役となり開発が進んできました。
このような発展の歴史を持つ渋谷区をデータと共に紹介していきましょう。
「定住の場」より「活動の場」。人の出入が激しい渋谷区のデータ
渋谷区のデータ(順位は 23区内)
・ 面積 15位
・ 人口 19位
・ 昼間人口 7位(54万人)
・ 昼間人口密度 36,000人/1平方キロ 5位
面積は狭く、住んでいる人も少ないのですが、昼間の人口は7位に跳ね上がります。渋谷は住む街より、外からやってくる人の方が多い、働きに来る街です。
昼間の人口の内、通勤・通学者で渋谷区外から来る人の割合は74.0%(40万2000人)です。この40万2000人のうち、都内の渋谷区以外の地域から来る人は56%です。
渋谷区以外の都内から来る人たちで
・流入就業者(通勤)率は 4位
・流入通学者(通学)率は 2位
渋谷区に働きに来る人、勉強しに来る人が多いことがわかります。
次に「渋谷区で働く」環境をみてみましょう。
2001~2006年の5年間で、渋谷区内では事業所数が1300増(4.0%)、従業者数は4万9000人増(11.2%)となりました。
千代田区、中央区では従業者数が減っていますが、渋谷区では順調に働く場所や人数が増加しています。
渋谷区の産業で最も目立つものは、サービス業と卸・小売業です。
この業種の渋谷区内全産業に占める割合は、
・サービス業 28%
・卸・小売業 27%
2つあわせれば半数を超えます。
小売業年間販売額は、1兆1500億円で、千代田区を上回り中央区、新宿区についで第3位です。
大型店舗数および売り場面積は第3位、年間販売額も4位です。
渋谷駅周辺に集まるファッションビルや大型店舗、ショッピングセンターなどの賑わいをみれば納得の順位と言えます。
渋谷区の拠点「渋谷駅」のすごさは鉄道会社の事業戦略だった
現在、渋谷駅には6つの鉄道会社が乗り入れをしており、年間乗車人員8億4000万人(3位) 私鉄年間乗車人員3億5000万人(1位)の巨大ステーションとなっています。
これらの規模を築き上げたのは、民間の鉄道会社でした。明治時代末期から大正、昭和時代にかけて誕生した民間の鉄道会社は、鉄道路線開発と共に、路線に沿ったエリアの住宅開発や商業施設建設を推し進めてトータル的な街づくりを提案してきました。
鉄道を建設し開業するだけでなく、その路線を使って生活をしてもらうことを考え、鉄道事業は多角化され発展してきました。
これは東京都だけに限らず全国の大都市でもよくみられる、民間鉄道会社による街づくりです。渋谷区では、私鉄2社が互いの資本を出し合い、街の再開発を競った結果、魅力的な大型複合商業施設が次々と誕生しました。これらの鉄道会社が開業した商業施設がブランド化し、若い年代、とりわけ女性客を取り込む形で渋谷駅周辺のショップは次々と生まれ変わりながら現在のステータスを築き上げました。
渋谷区の今後
現在の渋谷区は、働く若い世代が日中に多く集まる区ですが、人口はどうなっているでしょうか。この区に住む人は面積が小さいこともあり23区中19位と少なくなっています。総人口の増加率も23区中、最下位となっています。もう少し詳しくみれば、転出率2位、転入率8位となっており、今後、区内在住者数が減るリスクもあります。
日本全体では高齢化が進んでいるため、このままだと渋谷区は人口が減少し活力がなくなっていくリスクもあります。
現在の「働く街」「遊ぶ街」としての魅力だけでなく、今後は「暮らしたい街」への意識を高め、魅力的な政策が増えれば、渋谷区のステータスも向上し、ひいては若い子育て世代の流入増につながるかもしれません。
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