東京の街コラム|第28回 若者の未婚率No1の街、中野区
「木賃ベルト地帯」は独身若者の密集地 中野区に多い木造住宅
昭和30年代~昭和47年頃の高度成長期、東京には人口が集中しました。
当時、大量に押し寄せた人の波に対して「住まいの受け皿」となったのが木賃住宅でした。
「モクチン」と呼ばれた木造建築の賃貸住宅の多くは、東京の西部、山手通り沿線に多く建てられました。
中野区はこの「木賃ベルト地帯」の中にあります。
中野区は、現在も当時の住宅事情の影響を色濃く残しています。
23区内で最も木造建物の密度が高い区です。
そして、当時、人の大量流入を受け入れたがために、宅地率2位、宅地に占める住宅用地比率2位となっています。
また道路率22位、平均道路幅員23位、幅員3.5m未満の道路延長比率1位、幅員3.5m未満の道路延長比率は44%になります。
これらのデータからわかることは、住宅用地には所狭しと家が建ち並び、道路が狭いということです。
区内で火事が起きれば、中野区の半分近くの地域では消防車が道路が狭すぎて現場に来ることが出来ない区となっています。
このように昭和時代の東京の下宿生活を今でも体験できそうな風情の中野区は、割安な賃貸料金が魅力となって多くの若者が集まる街となりました。
20~34歳の男女両方とも、その人数の区内の全人口に占める割合が23区内で1位となっています。
区内の一世帯あたりの人員は20位。
小家族が多い、つまり単身者が多く住む区です。
もう少し詳しくみれば未婚者の割合が高く、男性3位、女性4位で独身者が多いこともわかります。
人口密度も区内第2位の混雑ぶりです。
1平方キロメートルあたり2万人を超える人が住んでいます。
最も人口密度の低い千代田区で4,000人以下と比べれば、その過密ぶりがよくわかります。
中野区は、木賃ベルト地帯にある独身の若者が多い区と言えます。
中野区の住宅データと賃貸住宅に住む年齢層について
独身の若者が多いという事実を中野区の住宅事情から紹介します。
・ 民営借家の割合は23区1位
・ 民営借家の平均延べ床面積は23区で最低、3分の2が30㎡未満(=ワンルーム又は1DKの広さ)
・ 賃貸アパート、マンション(民営借家共同住宅)の割合は23区2位
・ 分譲マンションの割合が23位
高度成長期の頃、区内の宅地所有者が老後の生活設計として競って木造アパートを建てた結果が現在まで長く続いています。
このような木賃アパートに住む若者たちの年齢層を調べるために、中野区の0~34歳までの人口内訳を調べると次のようになりました。
若者の内訳(順位はいずれも23区内)
・ 6歳未満幼児人口比率 23位
・ 15歳未満幼児人口比率 23位
子育て世帯はほとんどいないことがわかります。
・ 18~19歳 15位
・ 20~21歳 7位
大学生で下宿生活をする人はいますがさほど多いとはいえません。
22~24歳 3位
25~29歳 2位
30~34歳 4位
上記年齢を見ると、大学卒業以降、中野区に住み着く独身世帯が多いことがわかります。
以上のことから、中野区は学生よりも大卒後の独身世代に人気がある区です。
中野区を支える若者の実態
独身者が多く住んでいる中野区の実態を、さらに詳しくみてみましょう。
・ 一般世帯の世帯人員構成比が「1人」の割合 2位(6割以上)
・ 未婚者の割合が高い 男性3位 女性4位
・ 30代の未婚割合になると 男性2位 女性3位
・ 合計特殊出生率 19位
・ 人口自然増加率 17位
一見、中野区に住んでいる人は独身者ばかりに思えますが、そうでもありません。
・ 婚姻率 7位
・ 平均初婚年齢(年齢が高いほど上位) 男女とも20位
この数字から言えることは、中野区では比較的若い年齢で結婚を決めて区外へ出て行く人もいる、結婚したら中野区では子どもを産まない人が多いことがわかります。
中野区の少子高齢化対策
少子高齢化がいっそう進む日本社会において中野区の現状を紹介しましょう。
まず中野区の65歳以上の高齢化率は10位となっています。
若者の多さが取り上げられることが多い中野区ですが、高齢者人口も多くなっています。
この現状に至った背景は、木賃住宅が増えた高度成長期時代に中野区の人口がピークを迎えていたことにあります。
人口が最多となった1970年に住宅地としての開発がほぼ終わってしまったことを意味しています。
この頃中野区に住み着いた人たちが、現在の高齢者になります。
そして現在、中野区では若者の流出入は活発ですが、子ども人口が減少しています。
2005年と2010年度を比較すれば、6歳未満の幼児人口は-17.4%で23区内最低、15歳未満でも-10.2%の22位となっています。
全国平均は、6歳未満が-4.1%、15歳未満が-6.0%であることを考えると、中野区ではかなり危険な状態と言えます。
これに対応すべく、中野区の中野駅北側は現在都市開発が進行中です。
オフィスビルや公園、大学などが次々と建設されています。
住宅地の多い中野区では、事業所数も23区で21位、従業員数も22位と働く場所が少ないのですが、この都市計画でオフィスが増えれば働きにやって来る人たちも増えそうです。
また周辺の住宅建設も進み、若い子育て世帯の増加が期待されています。
大災害への備え
次に大地震などの災害に対して、中野区の現状や対策を紹介します。
首都直下地震が発生すれば、中野区では区内の3割の建物が消失すると予測されています。
また想定される避難者は、震災1日後は51%、1ヵ月後でも45%と長期間の避難生活を余儀なくされることがわかっています。
このような事態を少しでも抑えるべく区では住民による防災活動を奨励しています。
身近な公園や広場に防災資材倉庫や防火水槽を設置し、住民による見守り活動などを「地域支えあい活動推進条例」として制定して内容の充実を図っています。
また初期消火対策として該当消火器の設置をすすめ、被害拡大防止に努めています。
この他にも川が多い中野区では、川沿いの低地部を対象とした住宅の高床工事費用助成制度のような洪水対策にも力を入れています。
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