東京の街コラム|第29回 人口5万人を超えた千代田区の未来
日本の中枢機関が終結した千代田区の人口の推移
東京都が作成した「東京都の人口」によれば、昭和35年以降より千代田区では人口が減少しています。
昭和35年は千代田区には119,045人の人が住んでいましたが、その後平成8年の34,595人まで減少し続けた後、都心回帰の影響を受けて再び上昇を始めました。
平成28年1月1日現在、千代田区の人口は55,131人となっています。
東京23区の中でも主要な役割を担う千代田区を一言で表すと、昼間と夜間の人口差が最も大きい区です。
人口が多いのは昼間で、夜間との差は20倍にもなります。
日本一賑わうオフィス街には住宅がほとんどなく、夜になれば人がほとんどいなくなります。
千代田区の人口は23区内で最下位です。
住民がとても少ない区です。
夜の人口が少なく昼間の人口が多いということは、この区は昼間に大勢の人が「働きにくる場所」であることを意味しています。
千代田区は産業別に分けやすい区で、丸の内、大手町には大企業が集中したビジネス街、日比谷や有楽町は銀座の商業地域に近いことから商業・娯楽施設が集まっています。
秋葉原は電器店の集積地、神田神保町周辺は大学、各種学校が多いことから出版業、印刷業、新刊書店・古書店が数多くあります。
そして千代田区の皇居周辺には国会議事堂、最高裁判所といった国の中枢機関が集まっています。
国内最大の規模を持つ東京駅には全国から人が電車に乗って集まり、都内での仕事が終わればまた電車に乗って全国へ戻っていきます。
日本全体を動かすような政治機関や交通機関の要所があるのは千代田区です。
偏りがある千代田区の人口分布
千代田区には皇居や日本の中枢機関が多くあることから、人が住むエリアにはかなりの偏りがあります。
住民基本台帳によれば、2010年1月現在、千代田区には26,000世帯が住んでいますが、地域別で見ると、丸の内が1世帯、霞ヶ関が5世帯、千代田区70世帯となっています。
以上の地域はオフィス街や皇居の所在地で住居エリアがとても少ない場所です。
住民がいるエリアは、最も世帯数が多いのが外神田の1,800世帯で、以下、富士見、神田神保町、一番町と続き、上位9位以内に千代田区の世帯数の半数が入っています。
世帯数が多いエリアではどのような人口の推移が見られるのでしょうか。
千代田区のルーツ 「お屋敷町」と「庶民の町」
エリア別に人口の推移を見る前に、千代田区誕生の経緯を振り返ってみましょう。
現在の千代田区は、戦後間もなくアメリカ主導で再編され誕生しました。
当時の旧麹町地区と旧神田区が合体して出来たのが現在の千代田区です。
旧麹町地区エリアは現在の丸の内や大手町、永田町、霞ヶ関ですが、これらの地域は江戸時代に大名屋敷があった場所です。
そして旧神田地区は、庶民の町として商売が盛んに行われていました。
神田地区では、商業が小売業と卸売業の2業種に分かれてそれぞれ発展してきました。
神保町の商店街、御茶ノ水の楽器街、秋葉原の電気街は小売業が集まった地域、神田の岩本町には衣料品の卸売業者が集まっています。
他には金物、医薬品といった特定業種の卸売を行っているエリアもあります。
千代田区の卸売業は中央区と並ぶ問屋の集積地と言われており、現在この2区内には23区内の卸売事業所の2割以上があります。
千代田区には、元々お屋敷エリアだった場所と昔から商売の盛んだった2つの地域があり、それらが一緒になって1つの区になったという経緯があるのです。
千代田区の今後を握る神田エリア
このような2つの特性を持ったエリアが一緒になった千代田区内では、エリアによって人口の増加や減少に特徴があるのでしょうか。
千代田区の人口推移は、北側の日本橋エリア、南側の京橋エリア、隅田川対岸の佃・月島エリアの3つに分けてみれば、どの地域で人口が伸びているかが分かりやすくなります。
2000~2010年の人口増加率は、日本橋エリアで105%、京橋エリアが70%、佃・月島エリアが51%でした。
日本橋エリアの中には、神田も含まれています。
旧商業地域だった日本橋エリアが現在も人口増加のポイントになる区です。
日本橋は卸売業者が多かったエリアですが、時代と共に業者はそこに一緒に住み込んでいた従業員と共にエリア外へと移動していきました。
その跡地にマンションなどの大規模住宅が建設されたことが日本橋エリアの人口増加率上昇につながりました。
今後もこのエリアの人口が増加すれば、千代田区の活性化につながるものと期待されています。
千代田区の今後の街づくり
昼間区民の活力を利用し区の行政改革を行って生み出した財源を活用して、千代田区では独自性を持った施策を実行してきました。
幼保一元化園の創設や区立の中高一貫高創設は、全て千代田区から始まりました。
また高校生医療費助成制度の実施を大都市圏で最初に始めています。
将来においても、引き続き少子高齢化に対応すべく地域コミュニティの結束を深め、区内それぞれの地域にある魅力や特性、皇居を始めとした観光資源を存分に利用して住みよい街づくりを目指しています。
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