東京の街レポート|第30回 都市改造事業で中央区の公園事情

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東京の街コラム|第30回 都市改造事業で中央区の公園事情

中央区 順調な人口増加を受け入れる都市改造事業が課題

都市改造事業が課題

国勢調査による2000~2005年の中央区の人口増減率は135.7%、2005~2010年では124.8%。
両データとも全国第1位の人口増加率です。
これだけをみれば中央区は、人がどんどん増えて街全体が活気にあふれている様子が想像できます。 加えて2020年のオリンピックでは晴海に選手村が建設され、その跡地には約6000個の住宅が整備される予定です。
江戸時代から現在まで日本の文化・商業・情報の中心地として発展してきた中央区は、今後も順調に人が増えて日本最大のメガシティの1つとして君臨し続けそうです。

全てが順調に見える中央区ですが、ここに至るまでには数々の紆余曲折がありました。

現在増加に転じた人口は、1960から1980年の20年でその数を16万1千人から8万3千人まで減らしました。
その後失った人を取り戻すために、区主導で住宅建設を推進する数々の政策を導入した結果、1996年より人口が増加に転じ2006年には人口10万人にまで回復しました。

区内定住者の増加には成功したものの、中央区内ではその人たちの生活を支えるスーパーなどの商業施設や子育て世帯に望まれる広い公園などが不足しています。
生活に便利な住みよい街を目指した地域の整備が今後の課題と言えます。

中央区の人口の推移

中央区では1960年以降の人口減少対策として1981年に「定住人口10万人」の目標を掲げ住民の呼び戻しを始めました。

当時は、中央区だけでなく千代田区や港区といった現在の23区のトップクラスの区でさえも、住民が減っていました。
「都市のドーナツ化現象」と呼ばれた時期にあたります。
高度成長期と呼ばれた1954年(昭和29年)から1973年(昭和48年)は、急激に都市化が進んだ時期でした。 エネルギーが石炭から石油に変わり、東京湾岸沿いに次々と工場が建設されて産業が発展しました。
都市での工業化が進み人々の所得が増えた結果、お金を持った人たちはより良い生活を求めて、広い住宅に住みたいと思うようになり郊外に一戸建てを購入して住み始める様になりました。
この時期、都内の中心部の大企業のオフィスや工場が集まった地域では人が住みよい環境を求めてどんどん流出していったのです。

中央区では昭和32年(1957年)より人口が減少に転じました。
その後バブル期に突入して中央区の土地価格が上昇したため、人口はさらに減少し、平成12年(2000年)1月1日現在、69,695人まで落ち込みました。

バブル期が終わると都心の不動産が大量に放出されたことで、比較的安値の住宅が大量に供給されるようになり都心居住者が増加するようになりました。 「都心回帰」現象はこうして始まりました。

1981年に「定住人口10万人」を掲げた中央区は、さらに1988年「定住人口回復元年」を宣言し、中高層住宅建設への助成金や住宅購入資金の融資斡旋、区立住宅の拡充政策などを次々と政策を投入します。
長年人口減少し続けた中央区は、これらの対策が実を結んで平成10年(1996年)から人口が上昇し始めました。

都市改造事業の結果データ

都市改造事業の結果データ

人口増加策を進めた中央区の現在はどうなっているでしょうか。

2000~2005年と2005~2010年間の人口増加率が全国トップ以外には次のような特徴があります。
(いずれも23区内順位)
・ 平均年齢 1位 (男性41.04歳 女性43.34歳で一番若い)
・ 昼間人口 7位 (605,926人)
・ 昼間人口比率 2位 (493.6)
・ 所得水準 4位 (547万円)

そして隅田川周辺リバーフロントエリアの住宅開発によって、30~44歳の子育て世代の割合は33.9%を超えました。
23区平均の26.0%を大幅に上回っています。
2005~2010年の6歳未満の幼児人口増加率は56.0%と驚異的な数字で23区平均5.7%に大差をつけました。

2020年東京オリンピック開催を控えて、中央区は日本全国から注目を浴びる区域になります。

都市改造事業の今後の課題

都市改造事業の今後の課題

全てが順調に見える中央区ですが課題もあります。

人口が順調に増えている反面、生活関連施設の整備が遅れています。
以前より指摘されていた日常の買い物ができる店は未だに不足しています。
大規模なスーパーがなく、食品スーパーも多くはありません。
ミニスーパーがその数を増やし、買い物問題は少しずつ解消されています。

そして緑被率が23区内で一番低いことからもわかるように、緑がある公園の数がとても少なくなっています。
浜離宮公園を除いた公園面積比率は23区内で20位となってしまいます。
これは幼い子どもを持つファミリー世帯にとっては、子どもを気楽に外遊びさせる場所がないことを意味しており、かなり深刻な問題です。

現在中央区内には、オリンピック選手村跡地や築地市場跡といった再開発候補地がいくつかあります。
これらの広大な敷地をこれからも住宅一辺倒にするのか、緑あふれる広場が加わるのかどうかが議論の余地があります。

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