東京の街レポート|第35回 コンパクトにまとまる台東区

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東京の街コラム|第35回 コンパクトにまとまる台東区

徒歩で生活ができる台東区は未来の日本のモデル都市

徒歩で生活ができる台東区

今後少子高齢化がすすむ日本社会においては、人や少ない資源を集積させて効率的に経済活動を行うことが国際競争力を高める上で不可欠だと考えられています。

現在、東京23区の人口は年々増加しています。
この理由は、産業が都心に集中していることや湾岸エリアを中心に住宅開発が進んでいること、価格が安い品揃えの多いスーパーが多く日常生活がしやすいことなど、私たちの生活に必要な全てのものが集まっており住みやすい条件が揃っているからだと言えます。

そして台東区は、23区の中でも面積が最小ながら人が多く集まり、観光地もあり、商工業を営む店や会社が多く活気にあふれています。

江戸時代より発展してきた東京の下町として、早くからヒト・モノ・カネが集まりやすかった台東区は、明治時代以降現在に至るまでの間にその全体像をさほど変えることなく発展を続けて現在に至っています。

経済活動が日々活発に行われ、住民の生活に必要なものが徒歩で全て調達できる便利な台東区は「コンパクト・シティ」のモデルとして今後も発展していく可能性を秘めています。

データからみる台東区の密度の高さ

外国からの観光客でにぎわう浅草がある台東区は、観光地以外にもさまざまな特徴を持ったエリアです。

例えば1960年の台東区の人口密度はあたり32,000人/k㎡でした。これは、2位の荒川区の約28,000人/k㎡を大きく上回る密度の高さです。時代をさかのぼる1935年では、46,000人/k㎡でした。

近年その人口密度は下がり、2010年には23区中8位となっています。昼間の人口密度も8位ですが、区内従業者の密度は6位、事業所密度は3位、卸売店密度2位、小売店密度1位、商店街密度1位、工場密度も1位、飲食店密度4位となっています。

1位にランクインしたものには、宿泊施設の密度、銭湯の密度、パチンコホールの密度などがあり、これらのデータから、台東区には多種多様な建物、店が密集していること、区内に住む人が区内で働く割合が高いことがわかります。

そして貴金属、宝石製品製造業の工場数、皮革関連製品製造業工場数が1位となっています。これらの産業は台東区の地場産業として長い歴史を持つ業種です。

台東区の地場産業を支える家族経営

台東区の地場産業

台東区は製造業や卸売業、小売業が区内産業の5割を占めています。
中でも靴やカバンなどの皮革製品、貴金属や宝石の製造業、卸・小売業はそれらの工場数が23区内でともに1位となっています。

そして貴金属・宝石製品卸売業は全国の2割を占める一大産業です。
これらの産業が発展した背景は、お寺が多かった台東区で仏具に使われる飾り細工や、吉原、浅草、柳橋からの装飾品の注文を受けた職人が数多くいたことが考えられます。

また江戸時代からの伝統工芸には、東京都が指定した41品目のうち27品目、はさみ、刃物、指物、桐タンス、仏壇、べっ甲、提灯、すだれなどが区内で製造されています。

これらの台東区の地場産業は、従業者9人以下の小規模事業所が区内の事業所の8割を占めています。住まいと製造が一緒になって行われる家族経営によって支えられてきました。
そのため開業50年以上の事業所の割合も高くなっています。

特徴ある商店街や宿泊施設は台東区の文化の象徴

このような家族によって代々支えられてきた製造・卸・小売業は、上野のアメ横や浅草の仲見世、谷中銀座、御徒町のジュエリータウンのような全国的にも有名な商店街を生み出しています。これらの商店街は地元の人たちだけでなく、他府県や海外からの旅行客が集まる観光地に成長しました。

東京合羽橋商店街は、明治末期や大正初期は古道具を扱う店の集まりでしたが、戦後は飲食店器具や菓子道具を販売する商店街へと移り変わりました。
170店舗が集まる800mあまりの商店街は、利用客の中でも国内からの観光客が65%、外国人観光客が25%を占める専門店街へと発展しています。

その他の商店街では、老舗店舗が商売を通じて台東区の古き良き時代の生活文化のアピールも行い、独自性を打ち出して集客増への努力が続いています。

また、戦後直後に家が無かった人々のために設けられた簡易宿泊施設があったエリアは、現在も日雇い労働者が多く住んではいるものの、その独特の雰囲気や衣食住の料金の安さが、お金をあまり持っていない海外からの若者の旅行者の増加につながり活気づいています。

このように古くからある商店街やドヤ街などが消えることなく、その姿を変えながら今もこの地に根付いているのが台東区の特徴です。

台東区の今後

台東区の今後

現在、台東区に住む人たちは高齢者が多く、その比率は24.2%で23区内2位の高さです。
全国平均22.8%と比較してもその割合は高め、そして出生率も7.1%で19位です。このため23区内で高齢化が進んだ区になっています。

このように見ると、区内は高齢化が進み人口が減少し続けるかのように思えるのですが、2009年の人口増加率は23区内第4位の1.4%の増加率となっています。

高齢化が進んでいるのに人口が増えて地域が衰退していない理由は、台東区に生活するために必要な全てのものが密集しており高齢者から子育て世代の人に至るまで、生活に必要な全ての用事を徒歩で足せる暮らしやすさがあるためです。

住みやすい場所として、台東区は今後より注目されるエリアになる可能性があります。

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