東京の街レポート|第37回 大田区の未来は大森エリアが左右する

お問合せ・運営会社

東京の街コラム|第37回 大田区の未来は大森エリアが左右する

大田区の未来を支える海辺の工業地と山の手の高級住宅エリア

高級住宅エリア

大田区は環境の良い山の手の住宅地と商工業が盛んな海側エリア、そしてその2つの地域に挟まれた繁華街の3つに分けられます。
元々東京が35区制だった時代の大森区と蒲田区が合併して誕生した区で、当時のエリアの特徴が現在まで受け継がれています。

合併して新しくできた区は、その面積が23区中最大の区となりました。人口も3位で、数字上の規模の大きさだけでなく、その潜在性も未知数です。

山の手の大森エリアは、大正初期から高度経済成長時代に多くの人が都心から移り住んだことで高級住宅エリアのステイタスを勝ち取り、現在も「住みたいエリア」の上位にランクインするブランドエリアとなりました。特に田園調布は、有名な財界人が作り上げたイギリス式の田園都市として有名です。

そして湾岸沿いの埋め立ては引き続き行われており、区内にある空港のおかげで、今後も工業をメインとして産業の発展が期待されています。
湾岸エリアに集まる工場は、住工一体型、家族経営というように小規模なものが多く、将来はこれらの中小規模工場の操業環境の維持が課題となっています。

大田区は、海側のエリアでは商工業が今後も発展することが見込まれていますが、少子高齢化に伴う世帯人員の減少や世帯の小規模化への対策をたて、住宅エリアに子育て世帯を呼び込むことが区の発展を左右するカギとなっています。

変貌を続ける湾岸エリア

大田区の東側、東京湾沿いのエリアは、東京都心から川崎、横浜に至るまでの間にあります。交通アクセスが良い利点を活かして、関東エリアの都市化を進める原動力となってきました。
大正時代初期頃から、この湾岸エリアが京浜工業地帯の一角として工場が増え始めました。旧蒲田地域では、高い加工技術を持った機械部品工業が発達しています。

そして昭和の始めに空港が開設され、数々の物流拠点が作られたことで流通が活発化しました。

戦後になり湾岸エリアの埋立事業が進んで平和島、昭和島、京浜島、城南島、東海島が大田区内に編入されました。そしてこれらの島々に多くの工場や流通施設が移転していきます。空港は、拡張工事が進み24時間利用ができるようになり、2010年以降再び国際定期便が就航しています。

これまで工業を中心に発展してきた湾岸エリアは、今後、製造や流通の場だけでなく他業種への土地利用のニーズの高まりに応えていく転換期を迎えています。

子育て世代を呼び込む定住地への転換が望まれる住宅エリア

住宅エリア

大田区は、大正から昭和初期にかけて耕地整理が行われました。そして戦後復興期の大森駅や蒲田駅周辺での土地区画整理を経て、現在の大田区の都市基盤が作られています。道路整備もこれらの都市開発と並行して行われてきました。

特に関東大震災後、工場進出が活発化し中小規模の工場が内陸部に拡大して、住工が混在する現在の大田区の原型が作られました。
そして、大正期から区の北東部でも住宅開発が進み、現在の住宅エリアが形成されていきました。 戦後間もない1950年頃からは、大田区の人口が増加し木造賃貸住宅が蒲田周辺に多数建設されています。

大田区の住宅エリアは、大きく分けると北東部の調布地区とそれより南側にある蒲田地区の2つになります。

学歴・年収・職業は、調布地区の方が高いのですが、事業所や工場の数、商業などの産業の集中は蒲田エリアの方が高くなっています。
小売業販売額も蒲田エリアの方が高くなっており、国際線が発着するようになった羽田空港へのアクセスの良さを活かして、この地域の拡大、発展が見込まれています。

蒲田地区とは対照的に山手の大森地区では、住宅地そのものの知名度は高いのにも関わらず、有名な商店街もなく独身女性が好んで住むようなブランド力もありません。
大田区全体では、人口が増えてはいるものの、高級住宅が建ち並ぶ地域では高齢化が進んでいます。

現在の大田区は、エリアによって人口が増加しているところもあれば減少したところもあります。
工場が移転した跡地に大規模マンションが建設されたエリアでは人口増加が見られましたが、JR西側、京浜急行線東側の地域などでは人口が減少しています。
住む人が少なくなった地域は、敷地面積が狭い住宅が密集しており居住環境改善が今後の人口増への課題となっています。

また人口は増えたのにも関わらず、その大半が単身世帯で子どもの数が増えない地域もあります。
このようなエリアでは、子育て世帯が住める場所へと土地利用を進めていかねばなりません。

大田区の都市化への課題

23区1位の広さを持つ大田区は、商業地域、工業地域、物流集積地、住宅密集地とその特徴に差があります。

今後は、各地域の特性をより活かすべく、環境を整えて都市活動を維持していくことが望まれています。

また産業の活性化を図るため、道路や鉄道などの交通ネットワークの整備を進めていくことも必要です。
特に空港の拡張や国際化に対応するために、臨海部埋立地と既成市街地を結ぶ新たな交通網の構築と整備は急務となっています。

そして日々変わる市街地を中心に、災害に対する備えをしておかねばなりません。また街づくりは防災や機能面だけを追及するのではなく、地域の特性が反映されるよう景観面や環境問題にも配慮しなければなりません。

広い面積に多くの顔を持つ大田区は、それぞれの特性をバランスよく活かせば、今後より魅力を高めるエリアに成長する可能性があります。

最新東京の街コラム

↑ PAGE TOP

上に戻る