東京の街レポート|第39回 墨田区はおかみさんの街として主婦の就業率は3位

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東京の街コラム|第39回 墨田区はおかみさんの街として主婦の就業率は3位

古き良き伝統に支えられた墨田の存続を握る地域ブランド化戦略

地域ブランド化戦略

江戸時代からの下町として発展してきた墨田区には、数多くの文化や産業が集積しました。大相撲が行われる国技館に近いことから、昔から多くの相撲部屋があります。
また東京の夏の風物詩「隅田川花火大会」は、この墨田区エリアで江戸中期に始まった「両国川開き花火大会」が継承されたものです。
そして2012年5月に東京スカイツリーが開業し、東京の一大観光拠点の役割も果たすようになりました。

墨田区では長年続く文化や産業に加えて、このスカイツリー開業がもたらす区内商業の活性化が期待されています。

墨田区には「伝統文化の街」以外に、「ものづくりの街」の一面もあります。製造品出荷額が23区中3位という数字からもわかるように、製造業が活発に行われてきました。
明治時代の主な工業製品は瓦や髪結具、ろうそくでしたが、やがて河川に囲まれた立地を活かし工業化が進み、紡績、精密工業、石鹸 製靴の生産が行われるようになりました。現在は、金属製品、印刷及び関連業、繊維工業、皮革とその製品の製造が主流となっています。

長い歴史の中で主力商品が移り変わってきた製造業は小規模な零細事業者が多く、家族全員で事業を支えてきました。この経営形態は今も続いています。主婦の就業率が3位という数字がそれを表していると言えます。

少子高齢化時代に突入した日本社会において、墨田区の家族経営主体の製造業も衰退期に入っています。既存の製品から新しく付加価値の高い製品の開発、製造を行うのと同時に「すみだ」の知名度を高めるブランド戦略の成功が今後の墨田区の課題です。

「すみだ地域ブランド戦略」を展開する墨田区の労働力

墨田区の地域ブランド戦略は「すみだモダン」と名づけられ、その活動が始まっています。

「あたらしくある。なつかしくある。」をキャッチフレーズに掲げ、江戸時代から継承された地域の文化を次世代へ届けながら、優れた技術力をベースに墨田区ならではの独自性を打ち出した暮らしを豊かにする製品を生み出していきます。
新しく開発された商品は、商品部門と飲食店部門の2つの部門に分かれてそれぞれ審査を受けて、基準を満たせば「すみだモダン」の認証を受けることができます。

このようにして「すみだモダン」の認証を受けたさまざまな商品が全国に広がることで、墨田区の商品開発力や技術力の高さをアピールし、墨田区のイメージアップ効果を高めることを目的としています。

墨田区では、東京スカイツリー開業と同時期にこのブランド戦略を開始しました。そしてこのブランド戦略を中心に街づくりや情報発信も行っています。

これらのブランド戦略に参加する地域の労働力は、15歳以上人口に占める就業者数の割合が23区内で1位となっており、その潜在力の高さには目を見張るものがあります。

区内の製造業の従業者数は4位で、これも23区内では上位にランクインしています。そして製造業における家族従業者の割合が3位、工場の密度が2位、主婦の就業率が3位ということからもわかるように、1事業所あたりの規模は小さくても、家族全員で一致団結して仕事に携わってきたことがわかります。このような職場環境は、東京の下町エリアによく見られる特徴です。

また墨田区では保育サービス充足率も2位となっており、待機児童が比較的少ない区で、子育て世代の母親も働きやすい環境が整っています。

墨田区発展の課題とは

墨田区発展の課題とは

墨田区は江戸時代以来の下町、庶民のまちとして、地域や人とのつながりが深い環境の中で数多くの伝統文化や地場産業が育ってきました。家賃相場が手ごろなことや、下町情緒あふれる環境や交通アクセスの良さで単身世帯、ファミリー世帯を問わず賃貸住宅の人気も安定しています。

今後は、これらの特性をより活かしながら、官民がそれぞれの役割分担のもとに一致団結して魅力あふれる街づくりに取り組まなければなりません。しかし、現在の墨田区は区の財政が悪化しています。

生活保護費や子ども手当て、後期高齢者医療制度の給付費といった義務的費用の増加、老朽化した公共施設の半分以上が建て替えや改修を必要としています。限られた予算を街づくりに活かすためにも、不必要な公共施設の建設中止などを含めた区の予算計画の見直しが急務となっています。

財政面の厳しさを抱える墨田区ですが、江戸時代以来の下町文化の中で育った住民どうしの結びつきはとても深いものがあります。このコミュニティの強さを利用して自治体では、区と区民が役割を分担しあい地域の問題解決を行う仕組みづくりに取り組んでいます。

1人暮らしの高齢者の見守りや子育て支援などの課題に対して、両者が力を合わせて取り組む姿は「協働(きょうどう)」と呼ばれています。

東京スカイツリー開業後は、墨田区の政策全てがその影響を受けると考えられています。実際に観光や産業だけでなく、防災や教育、福祉などの全ての施策がどのような影響を受けるかを注意深く見守りながら、区と区民が一体となり区の政策実現を目指しています。

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