東京の街コラム|第40回 学問の街文京区は人口増加を続ける
名門大学に導かれた産業が発展する街 文京区

文京区は東京23区のほぼ中央にあります。起伏が多い土地で坂が多く、区内は場所によってその景観に違いが見られます。
文京区は、日本の最高峰と称される国立の東京大学の所在地として知られていますが、区内に本部を置く大学の数が千代田区に次いで2番目の多さとなっています。そして有名私立中・高等学校も多く、区内の高校生の大学進学率は23区内最高の70.6%です。
文京区は有名教育機関が多く、それに関連した産業が発達しました。大学との連携が深い医療機器の出荷額は23区内の3割を占めています。そして出版業の中でも印刷業は、製本工場の数が23区内でもっとも多く、全国にある製本工場の20件に1件以上が文京区にあります。また科学者や記者、編集者など、専門性の高い人たちが住む割合も高くなっています。
古くからの工場が閉鎖し、跡地に高層マンションが数多く建設されていることから、文京区では人口が増加しています。
学問の街は江戸時代から存在していた
文教の町として羨望が集まる文京区は、江戸時代に建てられた幕府の最高学府「湯島聖堂」にそのルーツをたどることができます。
江戸時代、現在の文京区にあたるエリアは武家屋敷が多くありました。そして5代将軍 徳川綱吉によって、1690年に幕府が管轄する学校「昌平坂学問所」が開設されました。
明治時代に入り、この学問所は政府の所轄となります。これまでの儒学を学ぶ場としての学問所は廃止されましたが、日本初の博物館となり、翌年には東京師範学校がおかれ国内初の図書館も開設されました。後に東京女子師範学校も設置されました。2つの学校は高等師範学校に昇格し、現在の国立大学へと発展しました。
湯島聖堂は1923年の関東大震災では一部を残しその大半を焼失しましたが、再建され保存修理工事を経て現在に至ります。
武家屋敷の大半は明治以降、大学の用地として引き継がれました。また水戸徳川家の上屋敷内庭園跡は小石川後楽園となり、現在まで緑地として保全されてきました。
このような学問とは切り離せない文京区の歴史が、後に産業の発展の土台となったのは言うまでもありません。
学問の街から地場産業が誕生するまで

明治政府は、近代国家を築くため教育政策に重点を置きました。文京区にあった武家屋敷跡には、多くの学校が設立され区外からの転入も増えました。
それに伴い、森鴎外や夏目漱石、樋口一葉、石川啄木といった近代文学を代表する文人が多く集まり、名作が次々と生まれました。
出版社や企業の本社、官公庁が多く集まった東京での印刷物の需要は、都内23区内の小規模な印刷関連の事業所が支えました。
他の区には見られない文京区に多い産業や職業
大学の数が多い文京区では、区内居住者に占める大学生の割合は6.2%と23区最高となっています。この数字は23区平均3.1%を2倍近く上回るものです。
そして研究者の割合も高く、就業者1,000人に対する研究者の割合は8.7人と、これも23区平均2.5人を大幅に上回る第1位の人数です。
また印刷関連業種の事業所数は 23区内3位、従業者数も4位と上位にランクインしています。 医療用機械器具や医療用品製造業の事業所数と従業者数は23区中でトップとなっています。
人口増加が見込まれる文京区の人気住宅エリア
文京区は1964年から人口が減少しましたが、都心回帰が始まった1999年から上昇に転じています。人口増加率は2000~2005年で23区中5位、2005~2010年で7位、2010~2014年で7位と安定した伸びを示しています。
人口は順調に延びていますが、人口密度は23区中4位とかなり高くなっており、工場跡地に建設される高層マンションが増える転入者を吸収しています。
大学が多く、下町情緒が感じられる閑静な住宅環境と治安の良いことが文京区に住むメリットとなり、人気の高さにつながっています。
現在開発が進んでいる住宅エリアは、東京メトロ丸の内線茗荷谷(みようがだに)付近です。
駅付近に鉄道路線と平行して走る春日通りを挟んで、2つの高台があり坂が多いエリアとなっています。
この付近も神社仏閣が多く武家屋敷跡の名残が感じられますが、周辺にある大学や緑あふれる公園、区営のスポーツセンターなど住環境がとても良い場所となっています。
茗荷谷駅前では高層マンションの建設が進んでいます。
元々物価が高い地域なので住宅価格もかなりの金額になると予想されていますが駅前立地の住宅はとても魅力的です。この他にも春日・後楽園駅前地区は4棟のマンション建築計画があります。
山手線内側の23区の中心都市として、教育環境に恵まれた住環境の良いエリアとして、文京区は今後も人口増加が続くことでしょう。
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