東京の街レポート|第41回 犯罪と向き合う街足立区

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東京の街コラム|第41回 犯罪と向き合う街足立区

「犯罪多発区」の既成概念を払拭できるかが足立区発展のカギ

犯罪多発区の既成概念を払拭できる

港区、目黒区、世田谷区がブランドタウンとして「住みたい街」の上位にランクインしている一方で、足立区は「住みたくない街」としてネガティブなイメージを長年背負い続けてきました。
「23区内で犯罪件数が多い区」として、ワースト1を記録した年が多かったのがその最大の原因と考えられていますが、区民の努力で2013年度は4位まで順位を下げたのにもかかわらず、足立区のマイナスイメージはなかなか改善されません。

「足立区は治安が悪い」というイメージは、犯罪件数の多さだけでは語れないその他の要因も複雑に絡み合っており、自治体ではマイナスイメージを払拭する施策を次々と打ち出しています。
その努力が実り、2010~2015年度の総人口の増加率が23区内6位となりました。

順位を上げた要因の1つは、区内の唯一の繁華街、北千住の駅付近を中心とした都市化といえます。鉄道路線の開通で利便性が向上したことなども追い風となりました。

そして、軽微な犯罪を取り締まるための防犯対策などが徐々に効果を上げています。
大学のキャンパス開設、東京スカイツリーのお膝元など、国際観光都市、文教都市として、足立区が発展する道筋ができつつあります。

足立区の本来の姿をデータからみる

何かと犯罪がらみのデータばかりが一人歩きしてしまう足立区ですが、東京23区の一員として産業も活発に行われています。

南に隅田川、西に荒川、新芝川、北に毛長川、東に中川、綾瀬川、垳(がけ)川、そして人工河川の荒川放水路があり、恵まれた水源を利用した農業が盛んに行われてきました。
総農家数は23区中4位、専業農家数も4位となっています。1農家あたりの耕作面積では6位で小規模農家が多い区となっていますが、農業就業人口が4位となっており、農業に携わる人が多いことがわかります。

工業も同様で、1事業所あたりの従業者数が少ないのですが、生産高や付加価値額は4位とかなりの活力をうかがわせます。

足立区が産業部門で1位と獲得しているものがあります。運輸業の事業所数で、足立区は東京に出入りする物流の中継基地の役割を果たしています。

いろいろな産業が発達している足立区に住む人たちの平均所得水準額は、2012年度で323万円となっています。これは23区内で所得水準が最低の区となっています。
やっぱりかと思いきや、この金額は全国の市町村ランクでは812市区の中で157位と上位2割に入っており、大阪市の192位、札幌市の285位より水準が高い金額です。

全国的なレベルで見れば、足立区は決して生活水準が低い区ではないことがわかります。

足立区発展のカギとなる No.1繁華街 北千住の進化

No.1繁華街 北千住の進化

人口増加率が6位となり、イメージが変わりつつある足立区の今後のカギを握るのは、北千住の発展にあります。
その中心となる北千住駅は、私鉄、地下鉄併せて6つの路線が乗り入れており世界6位の規模を持つ巨大ターミナル駅です。足立区の繁華街はこの北千住駅を中心に発展してきました。

そして2015年、北千住駅にとって最大の契機となる上野東京ラインが、2015年3月14日に開業しました。
上野東京ライン開業で、これまで東京~上野、上野~東北方面と分断されていた路線がつながり利便性が大きく向上しました。
相互路線が開通したことで、東北本線が延長され、東京を越えて横浜へ乗り換えなしで移動できるようになりました。
北千住駅周辺には大型ショッピングセンターがオープンするなど商業が活性化しています。政府が発表した基準地価では、北千住が都内で唯一の地価上昇地点となりました。

そして行政による大学誘致活動が活発に行われた結果、2006年以降、いくつかの大学が開学しています。

これらの進化が足立区の人口増加に大きく貢献したのは言うまでもありません。

足立区の「ビューティフル・ウィンドウズ運動」とは

マイナスイメージを払拭するための活動は、自治体主導でも行われています。

「ビューティフル・ウィンドウズ運動」は、アメリカのニューヨーク市で取り入れられた手法で、2008年から足立区でも開始されました。 区内で多い自転車盗難といった軽微な犯罪を徹底的に取り締まることで、他の犯罪も抑止できるという考えの下に「ワンチャリ ツーロック作戦」や「がっちりロック作戦」(防犯性の高いカギの無料交換)といった活動を行うものですが、このほかに区民と連携して防犯パトロールや駅前や公園の清掃、歩行喫煙禁止の徹底も積極的に行いました。コストのかからない地道な活動が、徐々に犯罪減少へと結びついています。

この他にも保育所では1食で1日の栄養が取れる給食方式を導入したり、無料の塾を開くといった日本初の取り組みも行われています。
また定職に就けないひきこもりの若年層の職業訓練をサポートするなど、生活保護受給者の自立を目指すサポートにも力を入れています。

このような区政は、足立区の下町気質あふれる生活環境とマッチして、若者の人口増へとつながっています。

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