東京の街レポート|第43回 昭和を代表する下町荒川区

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東京の街コラム|第43回 昭和を代表する下町荒川区

下町エリアの良さを活かして今後の人口増が期待できる荒川区

下町荒川区

東京23区の下町エリアの荒川区は、面積が21位、人口密度が3位ということからもわかるように小さな住宅が密集したエリアです。
江戸時代には宿場町と大根栽培を主とした農村地帯だった荒川区は、明治時代に入り隅田川の水運を利用した工業の町として発展しました。

関東大震災後は多くの罹災者が荒川エリアへと流入しました。
急激な人口増加に対応すべく集合住宅が数多く建設されたことから地価が上昇し、それに乗じてこれまでの農業用地が次々と宅地へと変わり、賃貸住宅が建設されました。

明治時代に建設された官営工場が1961年に閉鎖された後、工業は家族経営が主体の小規模な事業所が多く残りました。

以降、工場の立地規制の強化を受けて、区内から大工場は次々と移転し跡地に住宅地や商業地が形成されていきました。
区画整理が不十分なまま進んだ都市化によって、荒川区は住工が混在したエリアとなり、防災面の問題を抱えたまま現在に至っています。

現在の荒川区は、住民の定住志向が強かった結果、高齢化率6位 後期高齢化率4位となっています。
若い子育て世帯の数がなかなか増えませんが、区政の努力の結果、全国の主要都市の中で「共働き子育てしやすい街」のランキングで、第1位を獲得しました。

狭い土地に密集した店舗や公共施設、医療施設などが「何でも近くにある暮らしやすさ」につながっていることや、荒川区の下町ならではのコミュニティ意識の高さも子育てファミリーにとっての暮らしやすさにつながっています。

23区内で地価が17位、2005~2010年の人口増加が11位という結果は、今後、ファミリー層の流入増加が期待できる数字と言えます。

昭和時代の風情が漂う荒川区の街並み

荒川区は、昭和時代を思い起こさせる独特の町並みがその特徴の1つです。
都市化が進んだ大都会東京とは一味違う、昭和時代にタイムスリップした下町の情緒あふれる暮らしができるのが荒川区です。

他の区にはない荒川区の魅力を代表するものに路面電車があります。単にレトロ感が味わえる乗り物ではなく、住民の生活を支える主要交通機関となっています。

区の東西の中央を走り抜ける都電荒川線は、営業キロ数12.2㎞、停留所数30カ所、運転所要時間56分で、昼間の運行間隔が5分ごと、1日平均46,000人が利用しています。区内にはこの路線以外にもう1つ、路面電車が運行しています。

荒川区のもう1つの特徴には大型スーパーがなく、中規模の専門スーパーや小売店が集まった商店街が多いことがあげられます。経営環境は厳しいとはいえ、現金つかみ取りやテーマパークのパスポートプレゼントといった魅力的なイベントを展開して、集客努力を続けています。

この他に、昔ながらの雰囲気を味わえる場所には、もんじゃやき発祥の地と言われる荒川、日暮里の駄菓子問屋が集まる場所、紙芝居の制作会社があった町屋などがあります。
これらの昔を感じさせる雰囲気は、都市化が進んだ他の区では見られない荒川区の魅力です。

下町気質が支える荒川区のコミュニティ・パワー

コミュニティ・パワー

戦後の都市化や核家族化が進んだことで、地域内での人と人との交流が薄れてきました。
家族以外の人との関わりあいがない日常では、物質的、金銭的な豊かさのみが追求され、個人においては規範意識や社会的責任が失われた行動が目立つようになっています。
このような生活環境の中で、互いに助け合い支えあって共に暮らしていくということが困難になり、住みよい社会づくりへの障害へとなっています。

江戸時代より下町として栄えてきた荒川区でも従来からのコミュニティ意識が薄れてきており、荒川区では「あらかわの心」推進運動を掲げて、「地域を愛し、人を思いやる暖かく優しい心」を大人がリーダーシップを取りながら次世代へと継承する努力をしています。

具体的には、子どもの見守り活動や災害時の要援護者避難援助体制などがあります。
人口当たりの要介護者の割合が23区中3位のリスクを抱える荒川区では、55組織59体制で高齢者の要援護者を助ける「おんぶ作戦」体制を整えています。

また、57組織93隊の「区民レスキュー隊」で、100mに1人の割合で自力脱出困難者が発生するという想定に対応します。

このような人と人とのつながりを最大限に活かしたコミュニティ・パワーは、23区の中でも下町エリアにしか見られない強みとして、暮らしやすさにつながることは言うまでもありません。

荒川区の今後の課題

面積が23区で下から3番目に狭く、人口密度が3位という密集した町並みのために、名前を知られているような大規模商業施設がない荒川区は、全国レベルから見ればその知名度は低い区となっています。

2014年に実施された「実はどこにあるかわからない東京23区」ランキングでもワースト2位に入ってしまったのですが、それ以前に実施された2008年度の「行政サービス調査」の分野別ランキングでは、「教育分野」で全国第1位、「子育て環境分野」では第2位にランクイン、IT施策の充実度を比較した「e都市ランキング」では2年連続全国第1位となっています。

若者が多く集まるような有名スポットがないとは言え、「住みよい街づくり」に向けての行政の努力は、他の区では見られない素晴らしい結果を出していることはまぎれもない事実です。

荒川区は、今後の行政方針策定の参考データとして、ブータンが第3の指標として導入しているGNH(幸せの指標)をモデルにGAHを策定しました。これはグロス・アラカワ・ハピネスと呼ばれる区民世論調査で、「健康・福祉」「子育て・教育」「産業」「環境」「文化」「安全・安心」の6分野45項目の指標から、区民の幸福度を算出するものです。

これらの調査結果で区民は特に「健康」や「家族関係」を重視しており、行政ではこの結果をふまえて施策へのフィードバックを行っています。

GAHが区民に広く認知され、区民と行政の結びつきがより強まり「住みよい街」づくりが実現できれば、荒川区の知名度上昇につながることでしょう。

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